拝啓。私に生を強要した神に告ぐ.mfmf (ページ5)

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うたい続けてページ5

*

ライブ前、彼女のことを毎回思い出す。

脳に焼き付けられたように忘れられない彼女の優しい笑み、ピアノの音色。

彼女が最後に残してくれたあのメモは今でも家に閉まっている。

あれから何年もの月日が経った今でも僕は短かったけどあの充実したような毎日を忘れられずいる。

もう少し手を伸ばせば届きそうな場所にいた君は、今はどこにいるのかすらわからない。

けれど、きっとどこかで僕のことを覚えてくれている気がする。

自意識過剰かもしれないけど、彼女ならきっと、どこかで僕の歌を聞いてくれている。

そう信じて歌い続けたこの期間。僕はやっとこの大舞台に立てるようになった。

トントンｯとノックの音が聞こえ人が入る。

『まふまふさん。そろそろお時間です』

「わかりました！」

すぅと息を吸いスタッフさんの顔を見るとそこには、

あの時よりも光り輝いている、忘れもしない綺麗な瞳が見えた。

何を言うよりも先に君を抱きしめて僕は言う。

「今日、何の日か覚えているでしょ？ずっと伝えたかった。好きだよ。もうどこにも行かせない。」

拝啓

『うん。…もうどこにも行かないよ』

あの日私に生を強要した君へ。

ただ、お互いの体温を確かめるように抱きしめ合う。

愛しているよ

*
end.