拝啓。私に生を強要した神に告ぐ.mfmf (ページ2)

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りゆうなんて無い。ページ2

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柵を乗り越えた瞬間、知らないお兄さんに声をかけられた。

こんな場所で話すのもなんだと、近くのカフェに移動する。

頼んだ紅茶を啜りながらお兄さんは私に聞いた。

「どうしてあんなところにいたんですか？」

『自決しようと思いまして。』

平然と答える私にお兄さんは少し悲しそうな顔をする。

「そう、ですか。理由等を聞いてもいいですか…？」

たった3文字の言葉が頭を悩ませるなんてこと、そうそうないだろう。

私の家はネグレクトや、虐待などがあった訳でもない。至って普通な家庭だと思っている。

ただ、私がこの世界に、神に嫌気がさしただけの話だ。

『りゆうなんて、特にありません。』

そうとしか答えられない。

やりたいことも、特にないんです。

そう言いながら目線を逸らすと、大きなグランドピアノを見つけた。

『あのピアノ…』

「あれ自由に弾いていいらしいですよ！…やってみますか？」

こくっと少し頷いてピアノの前に置いてある椅子に座る。

お試し程度に鍵盤を触ってみると、とても綺麗な音が響いた。

弾く気なんて毛頭無かった。だけど、指が勝手に動いて音を鳴らした。

学生の頃に聞いた名前も分からないあの曲。
当時、曲名がわからなくなって聞けなくなってしまったけど、覚えている限りで頑張ってピアノアレンジをした。

昨年1度弾こうとしたけど、分からなくなっちゃって辞めたんだっけ。

1音1音が心に響く。

歌詞なんかはとっくに忘れちゃったけど、体は覚えてるんだな。

まるで心の傷が1つ埋まっていくかのように、癒された。

「〜〜〜♪」

はっと振り向くと、歌っているのはお兄さんで、高めの綺麗な声がこだましていた。

*