ひと握りの夢（D.Sakuma） (ページ3)

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「…ということで、どうでしょうか」

「えぇ。とても有難いお話です。ぜひうちでやらせて下さい」

「ありがとうございます」

私の隣では、さくさくと話が進んでいる。
かという私といえば…。

「…」

渡された書類を手に持ったまま、硬直してしまっていた。
『SnowMan』と『ジャニーズ事務所』という文字が並ぶ書類。

…今なら、何故相手の名前を最後まで部長が教えてくれなかったのか分かる気がする。
こんな大手の名前を事前に聞かされていたら、不甲斐ないことに緊張しまくって他の仕事が手につかなかっただろう。

今をときめく超大型グループ、SnowMan。
デビュー前から個々の人気は高く、デビュー後も次々と新しい記録を作り出している。

そんなグループの曲を、作る。

「おい、A」

「っ、あ、はい！」

不意に声をかけられ、考え込んでいた頭を現実に戻す。

「今回の曲作り、Aメインで進めていこうと思っている」

「私、ですか」

「ああ、任せたぞ」

そう言うと、部長は相手方の方へ向き。

「こいつ、若いですがセンスはいいので。うちのエースなんですよ。期待していてください」

な？と、とん、と肩を叩かれる。

「っ、はい！頑張ります！」

ぐっ、とガッツポーズをすると、少し緊張が解れた気がした。