きっと臆病者だったから ページ20
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｢……っ、先輩！｣
強ばった顔をしていたAは、俺の顔を見て安心したのか少しだけ眉を垂らし、一歩踏み出した。
｢待って！｣
だけどそれは叶わず。
横をすり抜けて行こうとしたAの腕を、折原くんがガシッと掴んだ。
｢は、離し、｣
｢なんでそんなにその人がいいの？！｣
｢っ｣
振り払おうとするAの声を遮って、折原くんは俺に鋭い眼光を向けてきた。
明らかに挑戦的なそれ。
その反抗的な瞳に負けじと俺も目を細めて見つめ返した。
｢ずっと想われているの分かってて、その人はAの気持ちに応えようとしてないじゃんか｣
｢痛っ、……やめ、て｣
折原くんの掌の力が強くなったのか、Aは痛みで顔を歪める。
｢Aの気持ちを知ってて、都合の良いように弄ばれてるだけだって……なんで気付かない？｣
｢……先輩は、弄んでなんか、｣
｢じゃあ本人に聞いてみるよ｣
｢えっ｣
驚き目を見開くAを他所に、腕を掴んだまま折原くんは俺の前まで歩み寄ってきた。
｢Aの事、どう思っているんですか｣
｢……｣
｢答えられないんですか｣
俺が答えずにいると、折原くんはフッと鼻で笑う。
｢見たろ。この人は何も答えない｣
｢も、もういいから、やめて…っ｣
｢こんなヤツ、この先Aがどんなに好きでいたってムダだ。幸せになんてしちゃくれない……！｣
―――図星だ。
俺は今まで、Aの好意から目を背けていた。
野球ばかりで両立の出来ない男に彼女は幸せに出来ない、と。
彼女はそれを分かっていて、それでもいい、と俺のそばにいる。
辛いのは、間違いなくA。
絶えず笑顔を見せるけど、その裏側は哀しみに溢れている。
俺はそんな彼女の心境を知って、突き放さないんだ。
本当はもっと良い人がいる、幸せになるなら俺はやめたほうがいい、とそう言って突き放す事は出来たのに。
……手放したくないと思ってる。
だから“首輪”と称したネックレスなんて贈って、彼女の心が離れていかないように、縛り付けた。
彼の言葉は間違ってない。
俺もAもそれは分かってる。
……だけど。
俺たちを繋いでいるのは“首輪”じゃない。
誰にも断ち切ることの出来ない何か。
―――人はそれを、何と呼ぶのかな。
｢好きだよ｣
静かな闇夜に、俺の声が響く。
｢俺は、Aの事が好きだ｣
嘘偽りのないこの気持ちが、キミに届くといいのだけれど―――
〈 きっと臆病者だったから 〉
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皐月(プロフ) - もうホントに好みの作風で、読みやすくて全部一気読みしちゃいました…！今まさに求めていた片思いのお話で、とってもキュンキュンしながらあっという間に読みきってしまってロスです…(笑)もっと大谷くんの作品作って欲しいです！楽しみにしてます♡ (2023年4月18日 20時) (
レス) id: f226820f57 (このIDを非表示/違反報告)
chimmy045509421(プロフ) - 時差がありますがコメントを…✨高校野球が好きで大谷という名前は知っていましたが、その後はニュースで見る程度…2023WBCでハマりました！大谷くんが好きになる子がこの子だったら良いのに…って素直に思いました^ ^❤️ (2023年3月19日 18時) (レス) @page35 id: 71162c9e08 (このIDを非表示/違反報告)
わお(プロフ) - 何度も読み返しては、ドキドキ感を味合わせていただいています＊！本当に、二人とも可愛くて、、年上ヒロインさんのお話もだいすきです！また、他のお話も読めることを楽しみにしています＊ (2020年7月26日 7時) (レス) id: e323b3ed3d (このIDを非表示/違反報告)
肴(プロフ) - corderoさん» コメント有難うございます！とても嬉しい褒め言葉です(T＿T)次回作、早めにupの予定でしたがオチが纏まらなくて停滞気味で...でも待っていて下さるのはとても嬉しいので、更新遅めになるかもしれませんがupしたいと思います！よろしくお願いします(*^。^*) (2019年11月23日 23時) (レス) id: cf19f87a6b (このIDを非表示/違反報告)
cordero(プロフ) - 入りきらなかったので2回め投稿します。私自身本人より年上のアラサーなので年上設定の次回作をとても待ち焦がれています。会話のテンポがいいだけでなく読みながら情景が浮かんでくるほどの萌文です。長くなるのでこの辺で。またコメントさせていただきます。 (2019年11月20日 9時) (レス) id: 2e348f3831 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：肴 | 作成日時：2019年4月24日 21時
