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｢先輩｣
｢ん｣
｢キスしたい｣
｢ん……………はぁ？！｣
何を言われたのか理解出来なかった俺は、その言葉の意味を暫く考え。
理解出来たと同時にバッと勢いよく身体を離す。
コイツは、また……！
｢ばっ、……何言って…！｣
｢だって私たち、友達以上恋人未満ってやつですよね？｣
｢ち、違…………んん？いや、そうなのか……｣
｢それじゃあ……友達以上の事してもいいですよね？｣
｢えっ、いや、それは、そうゆう段階が、｣
いくらお互いが特別な間柄だと思っていたとしても、だからってキ、キ、キス……をしていいってわけではないはず。
ダメだ。そんな余計に拗れる事をしては―――
｢私……先輩になら何されても良いです｣
｢？！｣
上目遣いでそう言われて、赤くならない男はいないと思う。
きっとAだって分かってやっているだろう。
やっぱり狡い女だ。
｢すみません先輩、調子に乗りました｣
……だけど。
｢冗談なので気にしないでくだ、…………！｣
分かっていて堕ちる俺も悪い。
あの日の熱が忘れられなくて、こうして彼女の唇に、自身のそれを重ねてしまってるんだから。
｢……｣
｢…せ、んぱ…い……｣
本当に一瞬だけ。
時間にしたら数秒の出来事だけど。
俺には、永遠に感じた。
｢お前……他のやつにはするなよ｣
｢……するわけ、ないじゃないですか｣
こっちはこんな事、お前にしかしてやらないんだから。人のペースを簡単に乱してくれやがって。
別に……嫌じゃない、けど。
額がコツンとぶつかって。鼻先が触れ合う。身体の奥が熱くて、キュンと鳴る。
(ああ、コイツには勝てないな)
そんな事を思いながら、俺は目を閉じて衝動のままに再び唇を彼女に寄せた。
｢大谷くーん！美味しいって言ってくれたチーズケーキ、作ったんだけど食べるー？………あ｣
｢……｣
｢……｣
｢…………えへっ、お邪魔しましたぁ｣
〈 中途半端でも熱が欲しい 〉
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作者名：肴 | 作成日時：2019年4月9日 21時
