甘く優しいキミが好き (ページ37)

今日:4 hit、昨日:40 hit、合計:227,471 hit

・・・ページ37

・

(電気……ついてない)

大通りから見える彼女の部屋の電気は点いていなかった。

それを分かった上で、マンションのエントランスに向かう。入口にはオートロックの自動ドアが設備されているけど、ロックを解除する暗証番号はAから聞いていたので問題ない。

部屋の前のチャイムを何度鳴らしても、反応はない。
おそらくだけど……中から気配すら感じない。

本当にいないみたいだった。

(旅って……なんだよ)

何処に？誰と？それとも1人？いつまで？
全く予想出来なくて、その場で頭を抱えた。

マンションを出てから何度かAに電話してみるけど繋がらない。電源を切っているみたいだ。

“旅”をするのにスマホの電源を落とすのはおかしい。もしかして……飛行機移動している、とか。

(そういえばアイツ、｢夏服を取りに帰りたい｣とか言ってた)

1度立ち止まって、新千歳空港からいわて花巻空港への飛行機の便を調べた。

(……あった。15分前に出てる)

検索すると、Aから先程送られてきたメッセージとの時間が当てはまった。これなら試合を見終わってから空港に向かっても間に合う範囲。

間違いない、Aは岩手の実家に帰ったんだ。

(俺は、話したい事があるのに)

自分から逃げておきながら、Aが逃げるのは許せなくて。

だけど今日の最終便はもう出てしまっている。

これは……明日行くしかない。

動揺してすっかり痛みなんて忘れてたけど、足首の捻挫の件で2日間の療養を取らされた。
だが岩手へ行くなら、都合が良い。

(逃げるなよ……俺のそばから)

俺はすぐに、ネットで飛行機の予約をした。

〈俺から離れることなんて〉