甘く優しいキミが好き (ページ36)

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俺から離れることなんてページ36

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焼肉屋を出て、1人寮までの道のりを歩く。

本当はもう少しいるつもりだったけど、なんだか夜風に当たりたい気分になって。
佑樹さんと中田さんにだけ挨拶して、足早に店を出た。

“このままでいい”

2人はそう言ってくれたけど、本当にそれでいいのだろうか。

Aは……どう思っているのだろう。

きっと彼女は、俺が決めたことには文句を言わず、一つ返事で従ってくれる。あくまで俺の意志を尊重しようとするはずだから。

だけど、本当にそれが2人のためになるのか。
結局、Aばかりが辛い思いをする事になるんじゃないか。

彼女の人生を決める権利は俺にはない。

それでも……黙ってついてきてほしい、と言うのは少しお門違いな気がする。
Aは喜んで頷くのだろうけど。

キミはどうしたい？

俺と恋人同士になりたい？

それとも、そばにいられるだけでいい？

Aがただ、俺についてきてくれるというのなら。
一つくらいは、彼女の希望に応えたいのだけれど。

ポケットのスマホが震えた。

手に取って画面を開くと、Aの名前が表示されて。
俺は急いで彼女から送られてきた文章を開いた。

『旅に出ます』

………は？

待って、全くもって意味がわからない。

なんだよ旅って。旅行ってこと？
いや、それなら旅行って言うよな……じゃあ旅って何？一人旅とか……傷心とか自分探しとか、そういう類いのやつ？

……いずれにしろ、ヤバいやつじゃ……

俺は踵を返して、今来た道を戻った。

寮生活の選手が多かったため、比較的寮に近い店で焼肉を食べていたのだけれど。
それはつまり、彼女の家からも近いって事で。

門限まではまだ時間がある。

一心不乱に走った。

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