甘く優しいキミが好き (ページ33)

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この1ヶ月、Aと連絡を取らずに過ごしていた。

野球に集中出来たのは本当だけど、それでもやっぱり、時々Aの顔が頭に浮かぶ。気付けば、今頃何してるのかなとか考えたり。元気にしてるかとか、大学ちゃんと行ってるかとか……まるで彼氏みたいだ。

そこで俺は考えた。
付き合う、ってなんだろうと。

頻繁ではなかったけど、毎日連絡を取っていた。
時間が空くことはあったけど、月に何度か会っていたし。
向こうの家に行く事も、別に抵抗なかった。

これって、傍から見たら付き合ってるのと変わらないんじゃ？

ただ“越えてはならない一線”が引かれているだけで、俺たちはもうその線を片方ずつ跨いでしまっている。

いや、もうお互いの領域に入り込んでいるのかもしれない。

でも不思議と、嫌な気にはならないんだ。
相手がAだからなのだろうか。

ズカズカと踏み込んで来ながらも、絶対に俺の領域を荒らしたりはしない。
俺の夢を第一にしてくれて、そこに関しては絶対に邪魔をしないように一歩引いたところで見ている。

出来た女だと思う。

彼女にするなら、間違いなくAだ。

だけど、今じゃない。

今はまだ、野球を優先していたい。

でも……そばにはいてほしい。

隣ではないけれど、俺の目の届く範囲に。

(やっぱり……ちゃんと会って話そう)

先程送った文章のあとに、『明日の朝、家に行くから』と送って、焼肉に行こうと誘ってきた先輩たちのあとについていく。

数時間後に送られてきた彼女からの返信で、激しい焦燥感に襲われる事も知らずに。

〈勝利の美酒を用意して〉