甘く優しいキミが好き (ページ30)

今日:1 hit、昨日:40 hit、合計:227,468 hit

確かな手応えがこの掌にページ30

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9回表ではなんとか強打者たちを抑えて、追加点を取られないことだけは死守出来た。

次は、ファイターズの番。
これが今日の最後の攻撃となる。

小さいようでとても大きいこの2点差を、なんとしても取り返さなきゃいけない。

3番打者の陽さんがヒットを打って塁に出た。
それに続くように4番の中田さんも強めのライナーで出塁。これで一気に同点ランナーとなった。

だけどその後は三振続きで進塁を許されず。

2アウト走者1・2塁で、俺の打順が回ってきた。

(……やっぱり痛いかも)

バッターボックスに向かう途中、足に走った痛みに顔を顰める。

さっきの登板中に、フォームが崩れて右足首を捻ってしまってた。手や肩ばかりに集中して、足先までちゃんと考えなかった自分の過失だ。

監督やコーチはそれにすぐ気付いて、次の打席は代打にすると言い出した。勝負のことを考えたら当然の判断だと思う。

だけど俺は、首を縦には振らなかった。
ただ強い口調で｢俺にやらせてください｣と。

もしかしたら初めて反発したかもしれない。

だからなのか、コーチには驚いた顔で｢行かせられない｣と言われたけど、監督は反対する事はなかった。
むしろ｢見せてみろ｣と言ってくれて。

監督の優しさに｢ありがとうございます｣と頭を下げて、裏で湿布を貼ってからネクストバッターサークルに入った。

許しを得たからには、やるしかない。

足の痛みの感じからすると、全力で走る事は不可能だと思う。

だけど、ヒットを打って塁に出なければならない。
アウトなんて以ての外だ。

つまり、今の俺に出来るのはホームランを打つこと。
それ以外は許されない。

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