甘く優しいキミが好き (ページ21)

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そんな足取りで道を抜けていったら、かなり早い時間で目的地であるAの家に着く。

そして彼女の家の前でずっと繋いでたその手を漸く解放した。

｢あの、ありがとうございました。送ってくれて｣
｢うん｣

特に何かを言うわけでもなく、小さく返事をした俺にAは戸惑っていたけど、今までのどこか気まずい雰囲気からなのか、｢じゃあ……おやすみなさい｣と少し遠慮気味に言って玄関の扉を開けた。

そして家の中へその足を一歩踏み入れた時。

―――バンッ

どうしてそんな事をしてしまったのか、わからない。

ただ、この喉に突っかかるモヤモヤを残したまま帰りたくなくて、大きな音を立てて玄関の扉を開いた。

｢！？｣

突然の大きな音に驚いた彼女は、振り返りざまに足元に並べられていた靴を踏み、バランスを崩す。
そのまま後ろに尻餅をつき、その痛みで鈍い声をあげた。

俺は無意識下でAの前にしゃがみ込む。
顔を上げたAは、間近にある俺の顔に更に驚き、息を飲んだ。

｢せ、せんぱ、い……？｣

Aはただ、戸惑いを隠せない表情で俺の名前を呼ぶ。

その声で暫く無言のままだった俺は、半ば反射的に口を開いた。

｢……佑樹さんと付き合うの？｣

口を衝いて出た言葉に、Aは目を大きくした。
全くもって意味がわからない、そんな表情。

俺だって、別にこんな事聞きたいわけじゃない。

なのに、口が勝手に動いてしまったんだ。

〈この感情の名前を今はまだ〉