甘く優しいキミが好き (ページ15)

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少しずつ変わっていく関係ページ15

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力強く言い切ったAが、急によそよそしくなって。
顔を俯かせたのだけど、髪の毛の隙間から見えた耳は真っ赤だった。

それを見つけたら、今度はこっちが堪らなくなってきて。

身体を起こしたAの腕を引き、胸元へ寄せた。

｢せ……せん、ぱい………？｣

もちろんAは驚いていて。
こんな動揺している彼女の声を聞くのは初めてかもしれない。

｢………Aはさ……なんで俺の事が好きなの？｣
｢……え？｣

意外な質問だったのか。
Aが目線だけ上に上げたのが分かって、俺は掌で顔を覆った。

初めて告白された頃。同級生の冷やかしが嫌で、Aに対して冷たい態度をとっていた。
連絡先を教えておきながら返事はあまり返さなかったし、プロになってからまともに相手をしていない。

自分でも結構酷い扱いをしたと自覚してるのに、Aは変わらずに俺に笑顔を向けて、嫌いになるどころか好きだと言う。

正直、不思議で。

そこまでして好きでいる意味ってあるのか、って。

｢意味なんてないです……ただ私が、先輩を好きでいるって決めたから｣

彼女からの返事は、とても単純だけど明確なものだった。

｢どんなに冷たくされても、軽くあしらわれても良いんです。先輩の邪魔にならないように……先輩の役に立つ人間になりますから｣
｢……｣
｢本当に私の事を嫌になるまで……そばにいさせてください｣

俺を見つめる瞳に、嘘偽りは1つもなかった。

｢……お前、凄いな｣

真っ先に思ったことはそれだった。

彼女は｢恋してたら普通だ｣と言うけれど。俺にはそういったか経験がないから、凄いとしか言い様がない。

｢俺は今、野球に人生を捧げている事が幸せなんだ｣
｢はい｣
｢正直、彼女とか恋人とか……必要ないと思ってる｣
｢はい｣
｢でもAの気持ちを迷惑だとは思ってないよ｣
｢はい………………え？｣

改めて、自分の気持ちを話した。

最後の言葉に目を丸くした彼女だったけど。
俺はそれに気付かないフリをして｢そろそろ帰るよ｣と告げた。

これ以上一緒にいたらいけない気がして。

｢気を付けて｣
｢ん。ごちそうさまでした｣

玄関で見送られてドアノブに手を伸ばす。

一歩外に踏み出したところで振り返り、口を開いた。

｢おやすみ、A｣

案外抵抗なく言えたそれには俺も驚いたけど。

俺以上に、彼女の方が驚いていたことは言うまでもない。

〈少しずつ変わっていく関係〉