甘く優しいキミが好き (ページ14)

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力で俺に敵うはずなく、簡単に彼女の体を引き離す事は出来たけど。

がしり、と肩を掴まれた。
凄い真剣な眼差しで。

見慣れないその気迫に、思わず固まってしまう。

｢先輩がホームランを打たなくったって、幻滅なんて絶対しません！｣
｢……っ｣

真面目な顔でそう言い出した彼女に何も言えなくて。
驚きのあまり、手から力が抜けたのが自分でもわかった。

｢内野安打でも、犠牲フライでも、盗塁でもいいんです｣
｢A……｣
｢例えピッチャーとして投げてバンバン打たれて負け投手になっても、3試合連続三振で見せ場が全くなかったとしても｣

待って。それ選手として不味くない？

最後のそれは言われても全然嬉しくないもので、目を細めて眉間にシワを寄せる。
何を言ってるんだコイツは……と怪訝な表情を浮かべた。

だけど、Aの目は真剣なままで。

｢私は野球を心から大切にしている先輩が好きです。試合中のキラキラした眼差しが大好きなんです｣
｢……｣
｢だから私の事なんて気にしないで、先輩の野球をしてください……！｣

そんな小っ恥ずかしいことを真面目な顔で言うもんだから。

俺はもう押し黙って、恥ずかしくも嬉しいその想いを噛み締めるしかなかった。
口元が緩むのを必死で抑えながら。

〈キミの言葉は1番のエール〉