巡り巡って、花は咲く。 ページ40
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それから。軍部の時代は終わり。やがて、時は巡る。
「……やあ、もう椿が咲いているよ。」
十月の終わり。並んで歩く、学生たちの姿があった。
あの軍服とよく似た、緑の制服。白い息を吐きながら、彼は笑った。
「もうそんな時期か……早いな。」
「これから寒くなればもっと咲くでしょうね……って仁王くん！何をしているんですか！」
「げっバレたぜよ……」
「何小学生みてえなことしてんだよ仁王、だっせー！」
「ブンちゃんに言われたくなか。」
薄暗い道に固まる彼らに、近づく影がひとつ。気づいた切原が、声を上げた。
「……あ！春木！？春木だよな！？」
「よっ。」
片手を上げた、一人の少年。真新しい制服を着た彼を見た幸村が、尋ねた。
「……赤也の知り合いかい？何か用かな。」
「いえ、俺はちょっと切原を見かけたから声かけただけで……て、何すか？」
「……いや……」
変わったことを聞くかもしれないけど、と幸村が、不思議そうに彼を見る。
「……君、どこかで……会ったこと、あるかい？」
「え？」
ぽかんと呆気に取られる彼を見て、幸村はごめんと笑った。
「いやね……なんか、懐かしいんだ。君のこと。」
「えー……変だな、俺あなたになんて会ったことないんですけど……でも、不思議ですね。俺もなんだか、あなたが懐かしいです。」
「え……？」
言い遅れました、と彼が再び口を開く。
「俺、切原の古い知り合いで、春木Aって言います。明日から立海でお世話になりますんで、よろしくお願いします！」
にかっ、と笑った彼につられるように、不思議がっていた幸村もまた、小さく笑ってよろしくと返したのだった。
流れ流れた時の先。誇りの花はまた、赤く咲き誇る。
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END.
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2016年3月1日 20時
