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倒れゆく俺の目に映った幸村の目は、冷たかった。
あんな目をされたことなど、なかった。幼い頃から今に至るまで、一度だって。
「……そういうことじゃあないんだよ、真田。」
「……ゆきむら……」
何もかもが冷たい。……あいつの目には、とうに俺など映ってはいなかった。
「守るだって。守られちゃ困るんだよ。……俺は、国のためなら命を捨てる覚悟でここにいるんだから。」
小さな笑みが、俺に聞こえた。
「惜しいな。俺は、ただ黙って戦うお前を一番信頼してたのに。俺のことをよく理解してくれる奴だって、ずっと……だからお前も、その覚悟でここにいるとばかり思ってた。」
「……っ……」
「真田、俺はね。国のためにその身を尽くして戦うお前が、大好きだったよ。」
気づけなかった。あいつは、とっくに、狂っていた。
いいや、狂っていたのは俺も同じか。
あいつの隣で、いつしか、俺も狂っていたのだろう。
「さようなら、真田。」
無慈悲な言葉は、刃とともに、俺の体を切り裂いた。
幸村。どうか。その道だけは、踏み誤るな……
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2016年3月1日 20時