椿、深き翠に落つる。【庭球浪漫/立海/男主】 (ページ36)

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あいつが、忠誠を捨てる奴らを処分していくのを、俺はなんとも思わなかった。

お前が好きなようにすればいいと、ただひたすらその様子を見てきた。

しかし何度目かの入れ替えが終わった日。俺の心は、どこか奥底で僅かながらに動きつつあったのだろう。

……思い返せば、楽しかった。何度言っても言う事を聞かない部下には手を焼いたが、どこか……家族のようで、落ち着いた。

それでも、あいつのやる事に口出しをしなかったのもまた事実。あいつが恐ろしかったのか、それとも崇拝する故だったのか、それはわからない。

だが、俺もついに我慢の限界が来た。

俺は、蓮二を刺した。咄嗟の判断だった。あいつを刺しかけていたから。それだけで。

何の感情も、見出せなかった。だが、その日を終えてから、酷く重いものがなにやら俺に襲いかかった。

蓮二の目が、忘れられない。初めて、俺にも人情なるものがあったのかと自覚させられた。

「……」

このように、人を殺めるのが、果たして国のためになるのだろうか？

そんなことを燻らせながら、次の日。俺は、あいつの元へと足を運んだ。