死の果実を持つ少女 (ページ28)

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「爆弾の場所がわかったんですか？」

国木田が卓上に置かれた携帯電話に向かって云う

「事件が解決したからこっちで温泉卵でも食べて九州観光しようと思ってたのに」

電話の向こう側から聞こえてきたのは天真爛漫な男性の声だった

「駄目だねぇ、皆。僕がいないと捜査ひとつ真面に出来ないんだから！」

知らない声だな……他の探偵社員さんか

「刻限は日没です。場所を教えてください」

太宰が先程とは打って変わって真剣な声色で尋ねた。この事件の深刻さがわかると云うものだ

もし私が犯人なら……駅、学校、高速道路……

まあこの人口が多い横浜では何処でも甚大な被害が出るだろうが……

「釣具屋さん」

……おっと予想の斜め上を行ったぞ

「成る程、流石は乱歩さんだ」

見れば太宰が口許に微笑を浮かべて納得したように頷いている

「え、と、何故に釣具屋さん……」

「説明は車のなかでするよ。疾く！」

　＊＊＊＊＊

「で、釣具屋さん？」

国木田が運転する車のなかでAは再び問うた

「地図ある？」「座席の後ろだ」

Aが探しだす。それは横浜市内の地図だった

「97ページ」

云われるままに地図をめくる。薄い紙に手こずりつつも目当てのページに行き着いた

そこには海を示すのっぺりとした水色と無数の円。これは──

「横浜の、石油コンビナート……！」

何で思い付かなかったのか

そこで爆弾が爆発すれば石油に引火、数日間続き最悪の工業火災となっただろう

多くの命が失われるだけでなく、経済への影響は計り知れない

「しかし勿論石油施設に入るにはそれなりの手続きが必要だ。もっとも簡単なのは爆弾を車に乗せ、近辺に放置すること」

「その条件に合致するのが件の釣具屋というわけか」

国木田が悔しそうに云う

「というか先刻の電話の相手って誰ですか？」

乱歩さん、だったか。会議の時に名前出てたな

「ああ、彼は探偵社の誇る稀代の名探偵さ」

ほう、名探偵

「乱歩さんは『超推理』という能力を所持している。見ただけで物事の真相が浮かぶという凄まじい能力だ」

「なんですかその能力！？」

強過ぎやしないかね

成程、あのふんぞり返ったような口調にも納得がいく

「まあ、いつか会うことになると思うよ」

──その後、一件の電話で雑談は打ち切りとなった

その内容は──

「軍警の爆弾処理班が現場に到着したらしい
──ただ、爆弾は移動不可能なタイマー式で解除は出来ないとのことだ」

……どうしたものか