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「蓮水、お前は親御さんが待ってっからもう帰っていい。早退扱いにはなんないから安心しろ。じゃあな」
表彰式前に言われていたとおり、相澤先生のその言葉で私はとクラスメイトとわかれ、関係者席へ向かっていた。
案の定透や緑谷からは心配そうな目で見られてしまったが二人には大丈夫、と伝えるように微笑み背を向けた。本当は何も大丈夫ではないが、こればっかりは親子の問題。他人を巻き込む訳にはいかないのだ。
『どんな顔すりゃいいのさ……』
母親を、子供にとっての絶対的存在を、信じられなくなった時、私は果たしてどんな顔をしているのだろう。
世の中親のことを嫌う子供なんて山ほどいるんだろう。でも私はそうではなかった。ほんの数時間前までは、大好きで、憧れで、信頼してたんだ。まだそれを過去形にすることへの戸惑いすらある。
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「A、お疲れ様」
ほら、そうやっていつもの優しい顔で私を出迎えるんだ。とっさに口を開くも、そこから音は出ず、空気しか出せない。母は苦笑いした。
「轟くんからどこまで聞いたのかな。お母さんのこと、ちゃんとAにも話すね」
そこから母が語ったことはこうだ。親を丸め込まれ個性婚の約束をつけられた。
だがそんな中エンデヴァーの従兄弟である父さんが母を救おうとしてくれた。そして母はそんな父さんに恋をした。その恋は見事に実り、半ば駆け落ち状態で相互の両親と絶縁。エンデヴァーから逃げることに成功した。
でもそれじゃあ私が聞いていた話と矛盾が生じる。
『それじゃあ高校時代に恋をしたっていうのは？』
「ごめんね、半分嘘なんだ。本当のところは私が一方的に高校の頃お父さんに片思いしてたの。お父さんは私が卒業してしばらくしてから婚約を嫌がってる話を聞いてなんとかしてくれようとしてね。本当は私のこと好きじゃないのかななんていまだにたまに思ってる。そんなはずないんだけどね」
お父さんの母を見る目はいつも優しい。子供の私から見てもあの父親が同情だけで母と結婚したとは思えない。
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