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『そりゃまたなんで？』
轟焦凍のお母さん。私の母の従姉妹で親友。きっと私のことも母から聞いてはいるのだろう。
どう、思われてるんだろうか。轟焦凍の代わりに苦しむはずだった子？それとも運良く幸せな家庭に生まれた恵まれた子？
「……そんな顔すんな」
怯えた顔をしてしまっていたのだろうか、轟焦凍がふと私の顔をじっとみつめ、手を伸ばした。
その手が私の頬に当たるか当たらないかの位置で一度止まり、触れることなくおろされる。
「ただ、会いたがってただけだ。俺がお前を恩人だって言ったから」
『恩人？それこそ緑谷でしょ。私は、何も出来なかった』
あなたを救いたかったのに。その言葉は飲み込む。私の勝手な言い分、わがままだ。幼い頃の思い出に縋ってしまった馬鹿な私の願望。
「いや、お前が俺と向き合ってくれていなかったらきっと知らないままだった。なにも、それは嫌だから」
そんなの私のセリフだ。あの日あんたが私に呪いの言葉を投げかけなかったら、何も知らずに一日を終えて、育って、ヒーローを目指していたかどうかも怪しい。
たとえ目指したとして、これを知らずにヒーローになってたらすぐに私は壊れていただろう。脆い、弱い私のままでクウォーターの劣化版になってた。
『………同じだよ、私も同じ』
「……そうだよな」
轟焦凍はそう返すともう何も言わなくなった。無言でホテルを目指す。
『ねえ、私も会ってみたいな。あんたのお母さんに』
そうか細く呟いた声を轟焦凍は確かに拾った。「ぁあ、ありがとう」そう言ってまた二人、アスファルトを踏んだ。
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