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気づいたら、暗闇の中に立っていた。さっきまで隣にいた飯田くんも、緑谷も轟焦凍もいない。身体の痺れもない。だけど動けない。これは、
「下手くそ」
ふと顔を上げる。そこには、私が立っていた。いや性格にいえば私の姿をした何か、なのだろう。でもどこかソレの正体が私にはわかる気がした。
『……わたしの、個性ですか』
「他人と話すのも下手くそだなお前は」
突然罵倒してくる私。もとい私の個性。おそらく水龍、水神と呼ばれてるもの。なんでわざわざ龍じゃなくて私の姿をしてるんだ。
「お望みとあらば龍でもなんでもいい。それよりもまずは、力の話をしよう。お前の母親はそれから始めた」
その言葉にハッとする。同じようなセリフ。エンデヴァーも言っていた。母は水神と話すところから始めたと。
『……なんで、いつも答えてくれないんですか』
お風呂場の時も、脳無やヒーロー殺しとの戦闘中喚んだ時だって体育祭の時のように、いまのように答えてはくれなかった。私の呼び声に、問いかけに。
「答えていたさ。お前が聞く耳を持ってなかっただけで」
きっと物理的な話じゃない。心の余裕や気持ちの強さ。あとは単純に私の力不足だろう。
『どうすれば聞く耳を持てますか』
「そんなの自分で考えろ、と言いたいところだがそうだな」
少し考え込むような仕草。私の姿だから、どこか既視感がある。
「お前の母親は私に名前をつけた」
名前、名前か。確かにそれなら呼べる。名前がなくちゃあなた、とか君とか対象がふんわりしてしまうがそれなら確実に指名できる。
『母はなんて、つけたんですか』
「どこまでも母親頼みか甘えん坊めが。いまの私の名は＿＿＿＿」
そこで暗闇が晴れた。
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