プロデューサーも楽じゃない (ページ2)

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ES ページ2

「Aさん、これ処理しといてくれる？」
「わかりました。」

受け取ったデータをマニュアルに従って捌いていく。アイドルの楽園、ESビルに勤務して数ヶ月。
元々暗記や単純作業は得意だったこともあり、新人にしては有能だとこのP機関でも噂になっている…と、先輩にも褒められた。

想定していたプロデューサーらしい業務はほとんどなく、書類仕事続きではあるものの、文句があるのかと言われればそういう訳でもない。

仕事には満足している。P機関に配属されはしたが、元々が事務志望だったし、お世辞にも自分にプロデューサー業が向いているとも思えないから。
凝り固まった肩を回していれば、視界の端に外出したはずの先輩が戻ってくるのが見えて、何かあったかと首を傾げた。

「Aさん！言い忘れてたんだけど、あなたの初プロデュース、Edenに決まったわよ！」
「…はい？」

おめでとう！と笑顔で書類を手渡してくれる先輩に、私は数秒動作不良のように固まった。

定時をとうに回った時間に帰宅した私は、家に帰るやいなや冷蔵庫の缶ビールをあけた。

炭酸が喉元を通り抜ける感覚に、やっと家に帰ってきた実感が湧いて一息つく。夕飯もそこそこにツマミを用意した私は、ふと思いついてテレビをつけた。

毎週放送のバラエティ番組にチャンネルを合わせると、タイミングよくタイトルコールが終わり、ゲスト紹介のターンだった。

『今週のゲストは、祓ったれ本舗のおふたりです！』
『どうもー』
『祓ったれ本舗です』

司会のコールと共に画面に映ったのは、祓ったれ本舗なんてふざけた名前の芸人…五条悟と夏油傑だ。ツラがいいと評判の彼らの登場に、会場の客席が湧く。

番組のレギュラー陣と子気味いいやり取りを交わす彼らを眺めて、苦い酒を煽った。

私には、彼らと共に戦った記憶がある。