プロデューサーも楽じゃない (ページ1)

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序章ページ1

「ほら、始まるよ！」

興奮気味の友人に、いまいち乗り切れない心を隠してステージへと目をやった。

色とりどりのスポットライトが舞台上の星くずを照らす。
沢山色があるのはメンバーカラーというものだろうか。周りでは着飾った女の子達が目を輝かせてペンライト……サイリウムというのだったかを振っていて、私も先程友人から借りたばかりのそれを見様見真似で振ってみる。

観客の関心を一心に向けられる彼らは、楽しくて仕方がないという表情でリズムを刻んだ。

曲が終われば身が竦むような歓声と拍手。黄色い声の合間を縫って啜り泣くような音も聞こえた。

沢山の観客が、ただ星くずだけを見つめて涙を流している。感謝を叫んでいる。目まぐるしい程の感情の波が、確かな力を持って私を圧迫した。

私は星たちの名前も知らない。激しく移り変わるモニターを見ていただけでは、顔も覚えられたかすら怪しい。

それでも。
彼らの拙い歌が、精一杯のダンスが、楽しくて仕方ないような笑顔が。或いは全身で喜びを訴える会場全体が、なんだかとても尊いもののように思えて。

「Aも楽しんでくれたみたいで良かった！」
「……楽しんでるように見える？」
「もっちろん！」

だってA、すっごくいい笑顔だもん！

今日この日が、この会場が、世界で一番幸せな感情で溢れた場所だと思った。

それがきっと、私の人生の転換期。