・Orange・【氷那】 ページ2
「康二！今日のデートプランは私が考えてきたから！」
「お、おん」
待ち合わせ場所に来た康二に食い気味に言い放てば、びっくりしながらも頷いた。
「まず映画館に行って、それから美術館に行こう」
「ん、分かった」
私の言う我儘に笑顔で付き合ってくれる優しい康二。
本当の狙いを知ったら悲しむかもしれないけど、今日は譲れない…てか譲らない。
最近忙しい康二とは中々デート出来なくて、今日は久しぶりだから。
「それにしても映画館はともかくAが美術館なんて珍しいやん？」
普段選ばない場所にちょっと疑問を持った康二が顔を覗き込んで聞いてくる。
「た、たまにはいいでしょ」
思った事が顔にすぐ出るタイプの私が顔を背けながら返事をすれば、何か勘づいたのか康二の顔が追ってくる。
「なんや企んでるやろ？ほら、素直に白状せえへんとぎゅっとするで〜」
どんな脅しだって突っ込みたいけど、まだ周りに人がいるこの場では避けたい行為だ。
「…から」
ポツリと呟けば、康二は耳を傾けながら聞き返してくる。
「ん？」
「カメラ越しじゃない康二と居たいから」
康二はカメラで写真を撮るのが大好きで、デート先は自然とフォトスポットが多くなる。
そうなると必然的にカメラを覗く時間も長くなる、勿論会話とかはしてるけどね。
確かにカメラを撮るのを楽しんでいる康二を見るのは嬉しいけど、たまにはゆっくり顔を合わせたい時もある。
だから今日はカメラ禁止の場所を選んだ。
私の意図を知った康二はちょっと眉を下げて私を見てきた。
「Aがそないな事考えてたん気付かなかった、ごめんな」
そう言うと康二は私の手をぎゅっと掴むとゆっくり口を開く。
「今日はカメラ出さへん、せやからAが行きたいとこ行こう？」
「いいの？」
「当たり前やん、可愛い彼女の望み位叶えられんような情けない彼氏やないで」
何故かキメ顔をしながら言う康二に思わず吹き出す。
「うん、康二は最高の彼氏だよ」
「ホンマにそう思てる？」
「思ってる思ってる」
笑いが止まらない私にいつの間にか康二も笑顔を浮かべていた。
「ほな、まずはどこ行く？」
「じゃあ…」
本当は２人で行きたかった場所を康二に伝えて、私達は手を繋いだまま歩き出した。
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作者名：きょう。・氷那 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HAK/
作成日時：2023年1月31日 18時
