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｢え、そうやっけ……｣
中谷｢はい……。｣
阪本｢……｣
｢……な、なんか気まずいから、ご飯でも、行く？｣
中谷｢さっすがAさん！｣
阪本｢やりー｣
｢あんたらもしかしてそれが狙いか｣
このシーンを、ふと思い出したのだ
あの時も、ジャケット脱いで、今よりはだいぶ痩せてるふたりが、私より大きい身長なのに、上目遣いで頼み込んできて。
劇場に入る前はインディーズ、劇場入ってからは、翔や小規模のユニットライブ、単独のゲスト。
様々なシーンで、数ある芸人の中でもかなり関わりのあったように思うマユリカ。
あの頃の私は、相方とも今ほどは仲良くなくて、今ではニコイチのロングコートダディとも挨拶を交わす程度で、
上のつながりは愚か、横の繋がりすらないって焦ってたっけか。
そんなひとりであわあわしてる私を見兼ねて、後輩の中谷が声をかけてくれて、
飲みに行ったりご飯に行ったり、その中で会話を交わすうちに仲良くなって……。
そのうち阪本もついてくるようになって、
芸人というか、男というものに耐性がついてくるようになって。
かなりこの業界で生きやすくなったように思える。
私が先輩として彼らにやってあげられることといえば、ライブに呼んだり、ご飯に連れていったりすることだけ。
あの時声をかけられなかったら、今頃どうなっていたことか。
そんな些細な金銭的補助では賄えないぐらいに大きなきっかけ。
それに現在の彼らはわざわざライブに呼ばなくても、自らの集客でとんでもない規模の利益を生み出す、立派な売れっ子芸人。
心のどこかで、マユリカに見放されたくない、って思っていたのかもしれない。
情けない先輩やなあ。兎はそれを見抜いてたんか。
｢うはは、それでええか！｣
中谷｢いいです、いいです。俺らはずっとAさんの元で可愛がってもらうって決めてますから｣
｢なんかさあ、あんたらって私にだけそういう態度よな？ロコディとか辻にはそんなんちゃうよなあ？なんかなあ｣
阪本｢だって適当ににゃんにゃんしてたら、あんた簡単に絆されるもん｣
｢あ〜！？そういうこと言わないの！！盲目でいたかったのに！｣
なんか気分いいからいいとこ連れてったる、と笑うと、見るからに嬉しそうなマユリカ。
こいつらはいつまで経っても少年のような遊び心やおもしろさで、いつまでも私の後輩。
ロングコートダディには悪いけど、マユリカは賞味期限が来るまで、とことん可愛がらせて貰います。
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作者名：流 | 作成日時：2024年3月3日 22時
