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大丈夫ですよ〜〜とスタッフさんが、俺たちが遅刻するのがいつもの事すぎて、怒りすらしない中、
阪本は｢いや、途中で雨が降ってきて……｣とか言い訳をし始める始末。
2人とも歳のせいもあり、ただでさえボロい体にダッシュがさらにヒビを入れたようで、肩で息をしながら項垂れる。
おかげで視界は汚れた床しか見えない。
こんな床してたんや、ラジ関。
なんか、赴きあるなあ。
｢ゲストを待たせんなゲストを〜｣
ぬはは、と鼻の奥で笑うような笑い方で奥から歩いてきたらしいA。
金で装飾された、黒のエナメルの靴がコツコツと近づく。
イラッと反射的に感情が沸き立って、なんか文句でもひとつ言ってやろうと(無論遅刻したのは俺たちだが)
顔をバッと上げると、その体制のまま動けなくなった。
｢？なんだあ、そんなエ ロい目で見て〜。Aちゃんの虜になっちゃったかにゃ？｣
阪本｢殺すぞ｣
｢そんなバキバキの目で言わんといてよぉ〜……｣
冗談やんか……、とわざとらしくニヤニヤしながら萎れていくA。そんな姿にも、俺は目が離せなかった。
Aはいつものラフな服装とは違い、えらくおめかししてこのラジオブースに来ていたようだった。
メイクも髪型も香水も、なんだか雰囲気すらいつもと違う感じがして、
俺は目の前にいるのは、Aの声をした別の誰かだと一瞬思うくらいに混乱していた。
あまりにも、可愛すぎたから。
肩上で揺れる、柔らかく巻かれたウェーブの髪に釣られて、俺の目も泳ぐに泳ぐ。
普段は、茶化したようにイライラするようなことばっかり言ってストレスという名の負荷をかけ、
俺が苦しんでいる様子を見て飯が食えると豪語している33期クソ代表のAが、
まるでアフターヌーンティーを嗜みながら、口に手を当てて笑うほどに上品なええとこのお嬢さんに見えて、意味がわからなすぎて膝が笑けて来た。
そんな動揺丸出しの俺を案じてか、阪本がバシッと背中を叩いた。いでぇ！、とその衝撃で背筋が伸びる。
阪本｢何ぼーっとしてんねん。はよ用意せえよ｣
中谷｢あ、う、うん、すまん、｣
｢そうやで〜5分以内にラジオブース入らんとスタバ奢りな〜｣
中谷｢マジでか！！｣
そんなダサい俺を悟られぬよう、慌ててAに背を向けてリュックを下ろした。
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作者名：流 | 作成日時：2024年3月3日 22時
