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ファン｢─────あの、Aさん？｣
｢……っあ！はい！｣
ファン｢チ、チケット1枚、ください｣
｢チケット！ああ、ありがとうございます！わー嬉しいなあ｣
僻みばっかりしてたら、いつの間にか目の前のかわいいファンにも気づかなかったみたい。
キラキラした顔でこちらを見てくる女の子。
高校生ぐらいかな。
可愛いな、フリフリのスカート。もう私の歳になると履けないから、見てるだけでなんか若返った気持ちになる。
ファン｢ずっとAさんのこと好きで｣
｢嘘ー！ほんま？｣
ファン｢ライブも2年前から、ずっと追っかけて通ってて、手売り、今日、勇気出して来て……｣
｢えー！？なんて可愛いことを……｣
ファン｢もう、大好きです、世界で一番大好きです。インスタもTwitterも欠かさず見てます、おもしろいし、かわいいし、……｣
｢ウワーー嬉しすぎる！！なにそれ！ビックリした！｣
私にそんなファンおったんや、と自傷気味に笑うと、｢いますよここに｣と、ファンの子はふふふと笑う。
ファン｢あの、良かったら写真とサインもらっていいですか……？｣
｢もちろんもちろん！いいよぉ。お名前なんて言うの？｣
大量にファンなんていらないんだ。
私を強烈に応援してくれる人が1人でもいれば、その人のために頑張れる。
自戒を込めてそう考えながら、丁寧にサインを書いて、名前にちゃん付けをして、ちょっとハートなんかつけたりして。
機嫌いいからサービスしちゃお。
ファン｢いきまーす、はいチ……｣
｢もっと寄らんくていい？大丈夫？｣
ファン｢え、あっ、じゃ……ええと、はい、｣
｢へへ｣
はいチーズ、と頬がくっつくぐらい近寄って、何枚か撮られた写真。
ファンの子は泣きそうになりながら何回も頭を下げて、｢ありがとうございました ライブ楽しみにしてますこれからもずっと応援してます｣と足早に会場に入っていった。
もうそろそろ私たちも中に入らないとオープニングトークに間に合わない。
いいファンの子がいたもんだ、と横を向くと、真顔のkentoと目が合った。
kento｢……今の子、Aのファン？｣
｢うん。可愛いよなあ、まじで。姪っ子かと思うぐらい愛しくなってもうたわ。
あたふたしてて超絶キュンとした。｣
kento｢ふーん｣
じゃあさ、俺の見た？とkentoは少し笑いながら口に手を当てて思い出すように言う。
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作者名：流 | 作成日時：2024年3月3日 22時
