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E組の時間 ページ4

「昼休みですね、先生ちょっと中国行って麻婆豆腐食べてきます。暗殺希望者がもしいれば携帯で呼んで下さい」


そう言うと、先生は窓からマッハで飛んで行き、原達は先生が去った空を見つめていた。


「マッハ20だから……ええと、」

「麻婆の本場、四川省まで10分くらい」

「確かにあんなもんミサイルでも落とせんわな」


私も同じく空を見やる。本場の麻婆豆腐ってどんな感じなンだなんて呟いて、磯貝に「そこか?」と苦笑いをされた。いやだって、本場って聞くとすごい気になるじゃンか。


「朝ふと思ったけどさ……ああも避けられると、いつか『残像だ』って言って背後に回られて手入れされそうな気がする」

「いや何考えてんだよお前……というかアイツなら、そんな事造作もなくね? 10分で中国に行くような奴だぞ?」

「だよな〜……そういう時はやっぱアレか? 『俺の後ろに立つな』って言ってナイフで刺したり?」

「五条……お前そういう古いネタよく知ってんだな」

「親父が無類の漫画好き」

「なるほど」


前原とそんな話が盛り上がっていると、話題は当然あのタコの先生に移り変わっていく。


「あのタコ音速飛行中にテストの採点までしてるんだぜ」

「マジ!?」

「うん、俺なんかイラスト付きで褒められた」

「てかアイツ何気に教えるの上手くない?」

「わかるー。私とAちゃん放課後に暗殺行った時ついでに数学教わってさあ、次のテスト良かったもん」


「ねー」と笑いかける陽菜乃に私も笑顔で頷く。確かにあの先生の教え方は、お世辞抜きで今迄出会ったどの教師よりも1番分かりやすく、以前の小テストは出来の良い結果となったのだった。


「……ま、でもさ」


誰かがぽつりと呟く。


「しょせん俺らE組だしな」

「頑張っても仕方ないけど」


……そう。

私たちのクラスは進学校の椚ヶ丘中学校において、成績不振や何かしら問題を起こした生徒が落とされた、いわゆる脱落組。

『エンドのE組』、正に読んで字のごとくだ。


私自身は、E組でも楽しかったら別にそれでいいと思っている。両親も私がE組行きと知った時は、失望しきった顔は一切せず、むしろこれからエグい差別を受けるであろう私の身を案じていた。「自分のペースで頑張ればいい」とも言ってくれて、本当に感謝しかない。


(……けど、)


目を伏せると脳裏に、美しい白が過ぎった。

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作者名:水原 紫歩 | 作成日時:2019年7月8日 21時

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