騙し討ちの時間 ページ15
「カルマ君…帰ってきたんだ」
「よー。渚君久しぶり」
イチゴ煮オレを片手ににっこりと笑うカルマ。授業も残るは6時間目のみという時間に、悪びれもなく現れた彼に思わず溜息が零れる。
「カルマお前……私の記憶違いじゃなけりゃ、確か朝に1回起こしたよな？」
「2度寝した」
「オイコラ」
私の問いにテヘペロみたいな表情で答えるカルマ。短いやり取りを終わらせ、その明るい色の瞳を殺せんせーに向ける。まぁ予想通りと言うべきか、大きいタコみたいな図体に興味津々な様子だ。
「あれが例の殺せんせー？ すっげ、本トにタコみたいだ」
「赤羽業君…ですね。今日が停学明けだと聞いてました。初日から遅刻はいけませんねぇ」
当然ながら顔に×印を浮かべる殺せんせーに対し、カルマは「生活リズム戻らなくて」と苦笑いする。うん、殺せんせー嘘だぞこれは。そして何かやらかすなと、この時私は察していた。
「下の名前で気安く呼んでよ。とりあえずよろしく先生！」
「こちらこそ。楽しい1年にしていきましょう」
カルマが差し出した右手を触手で握手したその瞬間──
─ドロォ
「！」
その触手は溶け、殺せんせー本人含む皆がその光景に驚く中で、カルマはすかさず2撃目の仕込みナイフを繰り出すも、既に先生はマッハで距離をとっていた。
「…へー。本トに速いし、本トに効くんだ
「…………マジかよ……」
まさかの展開に、流石に驚きを隠せない。何かしらアクションを起こすだろうなとは思っていたが、私の予想はそこまでだった。ここでまさか騙し討ちとは言え殺せんせーにダメージを与えるなんて、一体誰が想像出来ただろうか？
「けどさぁ先生、こんな単純な「手」に引っ掛かるとか…しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビり過ぎじゃね？」
「殺せないから「殺せんせー」って聞いてたけど……。あッれェ、せんせーひょっとしてチョロいひと？」
挑発を畳みに畳み掛けるカルマに、怒りで顔を赤くして青筋を立てているだけ殺せんせー。そんな2人の様子を遠目で見ていた茅野が渚に問い掛ける。
「渚。私E組来てから日が浅いから知らないんだけど、彼どんな人なの？」
「…うん。1年2年が同じクラスだったんだけど、2年の時に続けざまに暴力沙汰で停学食らって。このE組にはそういう生徒も落とされるんだ」
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作者名：水原 紫歩 | 作成日時：2019年7月8日 21時
