基礎の時間 ページ14
いっちにーさーんし、ごーろっくしっちはっち……
本日は晴天、そんな日の午後の運動場に響く生徒たちの掛け声。それだけを聞けば大体の人は微笑ましく「平和だなぁ」という感想を抱くであろう。
…………そう、
「八方向からナイフを正しく振れるように！ どんな体勢でも崩さない！」
*
ハンディキャップ暗殺大会の翌日、烏間さん改め烏間先生がE組の体育の時間を受け持ち、私たちの暗殺技術を高めてくれることになったのだった。
烏間先生が来る前は当然殺せんせーが体育の授業も行っていたが、1例として反復横跳びで分身が現れるという人間離れを通り越して異次元すぎる動きは当然私達がついていけるものではなく、体育は人間に教わりたいという杉野の意見には激しく同意した。
「でも烏間先生、こんな訓練意味あんスか？ しかも当の
「勉強も暗殺も同じ事だ、基礎は身につけるほど役に立つ。例えば…そうだな。磯貝君、前原君、そのナイフを俺に当ててみろ」
かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい。そう言った烏間先生に、最初こそは遠慮がちにナイフを当てようとした磯貝と前原だったが、それを先生は見事に捌き切り、遂には2人纏めて倒した。心得があるとは言え、人間に当てられないようでは、私達が殺せんせーを仕留められる確率の低さが嫌でも解る。
「クラス全員が俺に当てられるくらいになれば、少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる。ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々、体育の時間で俺から教えさせてもらう！」
*
「烏間先生ちょっと怖いけどカッコいいよねー」
「ねー！ ナイフ当てたらよしよししてくれんのかな〜」
「うーん、どうだろうなー……」
まだ烏間先生の人柄がよく分からないから何とも言えないが、多分あの人は堅物の部類に入るのではと思う。技術が上がれば恐らく褒めはするだろうけど、そんな人がよしよしは無さそうなのでは……？ という考えが過るが、言うだけ野暮だろうと判断し、封殺しておく。
「次は小テストか〜。体育で終わって欲しかったよ〜」
「確かになー。──！」
「Aちゃん？」
「五条？ どうかし……あっ」
そんな話をしていると、視界の端に映りこんだ"赤"に気付き、顔を上げる。陽菜乃も速水も何事かと私の視線を追いかけた先には──
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作者名：水原 紫歩 | 作成日時：2019年7月8日 21時
