翼無き鶴【暗殺教室】 (ページ11)

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弓道の時間ページ11

「これで、殺せんせーを殺そうと思ったンだよ。どっちかと言うと銃よりも勝手が分かるし、遠的……60mも距離あったら流石に気づかないだろうって思ったけど……」

「ダメだったか」

予想は大体ついていたが、磯貝がそう聞けば「おう……」と少し気落ちした返事が返ってきた。この前の杉野もそうだが、やっぱ得意分野で失敗すると落ち込むなって方が無理だよな。

「あークソっ、マジでチートすぎだろ殺せんせー！ンだよ耳無ぇのに弓が軋む音が聞こえましたのでって！いや、あったわ耳は」

「あったのかよ！？」

俺のツッコミに五条は頷き、そこら辺にあった木の棒で殺せんせーを描き始める。そして、意外にも可愛らしく描かれた殺せんせーに違和感を抱く。

「あれ、この殺せんせー……」

「おやおや、3人で先生の噂ですか？」

噂をすればなんとやら。
ある1点を指摘しようとすると、突然後ろから聞き慣れた声が飛んでくる。後ろを振り向けば、案の定殺せんせーがいた。「おはようございます、磯貝君、前原君」と言う殺せんせーに挨拶を返したところで、俺らはあることに気付く。今の殺せんせーの顔は、さっき五条が描いたやつと同じ状態になっていた。

「あの、殺せんせー。その、目が4つあるように見えますが……」

「いいえ、どれか2つが目ではなく耳の穴です」

「紛らわしいわ！！」

いやもうこれ、紛らわしいとかいうレベルじゃねぇぞ！！暗殺に失敗した際に俺と同じツッコミをしたのか、五条は額に手を付きため息をついている。

その後そろそろHRの時間ですよ、と言った殺せんせーはその顔のまま旧校舎の中へと消えていった。その時五条が弓やパネルなどを片付けようとしたのを目の端で捉え、俺は「あ、ちょっと待った五条！」と声を掛ける。

「な、何だよ」

「いや、弓道がどんな感じなのか見たくてよ、１回だけでいいからちょっと矢を放ってくんね？」

「お、おう。いいけどよ……」

俺の突然のお願いに戸惑いながらも頷いた五条は深呼吸した後、矢を番え構えて、ゆっくりと弓を引く。その姿はいつもの言動とは打って変わって凛々しく、不覚にもカッコいいと思い見惚れる。

「すごい集中力だな……緊張感がこっちにも伝わってくるよ」

「お、おう、五条すげぇ……」

五条から伝わる緊張感に、二人揃って息を呑む。やがて矢はパネルを目掛けて放たれた。