036 side to .. Momo ページ37
「ねぇ！ちょっと、どこ行くの？」
「それはついてからのお楽しみ」
「なにそれ！」
「いいから、いいから」
文句を言うAの手を引っ張って、歩く。さっき酔ってるようなフリをしたのは、Aと二人きりの時間をどうしようか考えていたから。
「ほら、あんま騒ぐと近所迷惑になるよ」
なんて、言えば渋々と言った様子で黙るA。明け方も近い時刻。誰もいない道を二人で歩く。
「怖い？」
「……だ、大丈夫」
そうやって言ってるけど、大通りから外れて歩いているせいか明かりはポツリポツリとあるだけで、車すら通らない。ちょっと強ばっている彼女の手をギュッと握って、先を進んだ。
「着いたよ」
「ここは……」
着いたのは都会の街中から差ほど遠くない場所にある丘の上。歩きだった分、時間はかかったけど。そのおかげでいい時間に来れたと思う。
「空、見て」
「わぁ……！」
夜明けの時刻。空が白み始めて辺りが明るくなってくる。
「ほんとは夕焼けのほうが綺麗なんだけど、Aと見たくて」
一人でドライブしている時に見つけたここ。誰にも教えていない俺だけの秘密スポット。
「綺麗……。連れてきてくれてありがとう」
でも、どうして連れてきてくれたの？と聞いてくる彼女と、俺は向き合った。
「ライブ始まる前に言ったこと、覚えてる？」
伝えたいことがある−−と、俺はAに言った。
「うん……」
「今から言ってもいい？」
ドクドクと、自分の心臓が高鳴っているのがわかる。深呼吸をして、呼吸を整えて。
「俺−−、」
Aには、数え切れないくらいに感謝している。昔から、俺が落ち込めば黙って隣に居てくれた。大丈夫だよって、そのあたたかい手で俺の手を握ってくれていた。
「A、いつも、ありがとう」
そんな君に何度救われたのか、分からない。
「どうしたの急に？」
「いいから、聞いてくれる？」
キョトン、とした顔をする彼女のそんな顔もかわいいと思う。
「ギクシャクしてたとき、隣にAが居なくて……。俺、ずっとAに頼りっきりだったんだなって思った」
隣に居てくれてたことで、こんなにも支えられてたんだと実感した。自分から遠ざけた癖して、隣に居ないことを寂しいと思った。
「……俺、小さい頃から、Aにひとつだけ言ってないことがあるんだ」
やっと。決心が付いたから、今から伝えるよ。
「……俺……、Aが好き」
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作者名：凛々瑚 | 作成日時：2018年3月16日 23時
