032 side to .. Yuki ページ33
「おかえりなさい……！お疲れさま！」
ステージから履けてくる僕たちをを一番に迎えてくれたA。今日は観客席の方で観る予定だったから、走って舞台袖まで戻ってきてくれたんだろう。
「……！A、ただいま」
「うわっ、A……！」
僕たちに飛びつかんばかりの勢いで、ハグをしてきた彼女。
「いつになくダイタンだね」
「ちょっ、A……俺たち、汗臭いからね？ね？」
まるで、そんなことはどうだっていい、と言うようにくっついてくる彼女に愛しさがつのる。
「……っ、モモくん、声……！戻って、よかった……！」
「あ、ああ……、それは、みんなの、Aのおかげで……って、A、泣いてるし……！」
「だって……！」
このこけら落とし公演、成功したのは彼女あってのことだ。ステージングから、演出はもちろん。僕たちがゼロをカヴァーしたいと言い出した時も、彼女は積極的に推してくれた。それから、今回のモモの声の件も……。きっと、彼女が居なければ、成功しえなかったものだと、僕は思う。
「あーほら、僕たち着替えてくるから、」
「ね？とりあえず、A、泣きやんでー！？みんな見てるから」
そこで、ハッとしたように僕たちから離れ、周りを見渡して注目の的になっていることに赤くなって小さくなったAをみんなが笑う。
「ヒューヒュー、」
「Aさんって、こんな大胆だったんですね」
「あー、イチャイチャなら他所でやってもらえませんかねー」
「……うるさい！イチャイチャじゃないから！」
ガヤガヤと最後まで騒がしいこの三グループ。でもこの三グループでこけら落とし公演を成功させることができて、本当によかったと思った。
「……ユキ、ありがとう」
「どうしたんだい、急に」
二人だけの楽屋。モモが真剣な顔つきで僕に話し掛けてきた。
「俺……、決心ついたよ。伝えよう思う」
「ああ」
誰のこと−−なんて、言わなくても分かる。
「ユキは……前に俺に聞いたよね？意識したことはないのかって。それ、ユキにも聞いてもいい？」
「ぼく？」
「うん。ユキは、Aのこと、どう思っているの」
モモの問いに少し考える。彼女をかわいいと思ったことはある。ふとした瞬間に異性だと意識したこともある。
「ビジネスライク以上なのは確かだよ」
でも……、モモのそれとは違うって言い切れる。
「……そうね……妹みたいなものかな」
だから、安心しなよモモ。
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作者名：凛々瑚 | 作成日時：2018年3月16日 23時
