029 side to .. Momo ページ30
「バンさんに会えてよかったね、ユキ……」
「ああ」
ユキの本音が聞けた。バンさんに会うことができた。それだけで何か胸の奥に突っかえていたものが消えていくような、そんな感覚がした。
「IDOLiSH7とTRIGGERが、俺たちの為に連れてきてくれたんだ。……みんないい子たちだね……」
「そうだな……。いい後輩に恵まれた。次は、僕たちが先輩らしいところを、あの子たちに見せないと」
「うん……」
「……でも、その前に、モモにはやる事があるだろ？」
「え……？」
ユキの視線の先には、忙しそうにスタッフに指示を飛ばしているAの姿があった。
「僕もさっき聞いたんだけど、今回のこと……全部、彼女が考えて、根回しをしたらしい」
「……！」
それを聞いて、動揺した。
「モモは、良いマネージャー……いや、良い幼馴染を持ったよ。もっとも、モモにとってはそれ以上の存在なんだろうけど」
「俺……」
Aには、もう呆れられたと思っていた。あの日、八つ当たりをしてからも、ずっと気にかけてくれていたのは知っている。なのに、俺が諦めていたから。だから、もう知らない、って、あの時言われたのだと思っていた。
「千さん、百さん、それではオープニングのシークレット、行ってきます！」
IDOLiSH7とTRIGGERが前座として、ステージへ上がるのを見送る。
「モモ、まだ時間はある。彼女と、話しておいで」
「ユキ、ありがとう！」
ユキの声に押されるように、俺は少し離れた所にある彼女の背中へ声をかけた。
「A……！」
「モモくん……？」
どうしたの？と振り返った彼女の腕を引っ張って、自分の腕の中に閉じ込める。周りが見てるのとか、気にしてらんない。
「えっ！？ちょっと……！」
「今回の事、全部、Aが考えてくれたんだってな」
「…………あの子たちから聞いたの？」
「うん」
情けない顔を見られたくなくて、彼女の頭を自分の胸板に押し付けた。思えば、俺が落ちている時、いつも支えてくれているのはAだった。
「あのさ……」
「うん」
「八つ当たりして、ごめん。諦めたりして、ごめん！それから……俺のこと、ずっと支えてくれてありがとう」
「……私こそ、ごめんね。私、躍起になってたの。モモくんにRe:valeでいて欲しくて、モモくんに歌って欲しくて……」
やっと言えた気持ちに胸をなでおろしていると、聞き慣れたメロディがステージから、流れてくる。
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作者名：凛々瑚 | 作成日時：2018年3月16日 23時
