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ギクシャクしたままのモモくんと私。それでも仕事に支障を来す訳にはいかないから、業務的な会話を繰り返す。ユキくんやおかりんはなにかあったって、気づいているだろう。
「……キツいなぁ」
あの日、キスをされた。きっと、なんの意味もないキス。ただ私の口を塞ぎたかったんだろう、その勢いの行為。
「……」
嫌じゃなかったかと聞かれたら、嘘になる。だって、そこに気持ちは何もないんだから。でも、あんな泣きそうな顔をしているモモくんを見たら、何も言えなかった。
「あ、そろそろ行かないと」
おかりんが別の仕事に出ているから、テレビ局へのお迎えは私の役目。少し落ちた気分を振り払って車のキーを片手に事務所を出た。
「……完全なRe:valeはここにある。僕と、モモが、築いてきたRe:valeだ。あんたの理想を押し付けるな」
「ユキ……」
駐車場に車を停めて、裏口まで脚を進めれば外にみんな集まっているようだった。その中心には、あの九条鷹匡。伝説のゼロのマネージャーであり、舞台演出家でもあった男、Haw9。
「君はともかく、隣に居る子は二流だよ。二流がそばに居るとね、スターの輝きを濁らせてしまうんだ」
惜しいね。千はもっと輝けたのに、と言う九条さんに、思わず言い返していた。みんなの視線が集まるのも気にせずに。
「モモくんは、二流なんかじゃありません！」
「君は……」
「Re:valeのマネージャーの尾上Aです」
モモくんに拒否られようがなんだろうが、私はRe:valeが好きだから。ユキくんとモモくんが好き。だから、二人のどちらかでも、悪く言われるのは嫌だ。
「……A。……っ、……俺は……、」
「モモくんの事、知ろうともしないで、二流なんて言わないでただけますか！？モモくんは……、モモくんは！」
ユキくんの隣に立つためにモモくんがどれだけ頑張ったか。それも知ろうともしないで、悪く言われるのは嫌だった。
「もういい、A。コイツに何を言っても伝わらない」
啖呵を切った私をユキくんが制する。その真剣な瞳を見て、私は口を閉じた。
「はは……。ゼロに挑戦する姿勢だけは君たちを評価してあげるよ」
そう言って去っていった九条さんを睨みつける。私、あの人、きらいだ。
「ありがとう」
「え？」
「Aが怒ってなきゃ、僕が怒ってた。だから、ありがとう」
「……うん」
ユキくんとモモくん、二人でRe:valeだと、私は思うから。
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作者名：凛々瑚 | 作成日時：2018年3月16日 23時
