020 side to.. Momo ページ21
Aの言葉はストンと俺の中に落ちていった。ほんとに、彼女は優しくて。俺の欲しい言葉をくれる。
でも−−
「この前、聞いちゃったんだ」
「聞いたって、何を？」
「……ユキが、五周年までに見つけてくれって、誰かに電話してるのを聞いちゃったんだ」
ユキはまだ、元相方であるバンさんを探している。それはきっと、俺が五年で期限切れだから。
「それって、俺は用済みってことでしょ。五年経ったから、俺はもう必要ないってことでしょ……」
ユキに直接言われたわけではないけれど。
「……モモくん、ちゃんとユキくんと話そ？」
「わかってる、わかってる……！……でも、五年って言ったのは俺自身なんだ。だから俺はもう期限切れなんだよ、きっと」
そう言った俺の瞳はグラグラと揺れているに違いない。ユキと話すのが怖いんだ。話して、ユキの口から言われることが……。
「……それって、怖がってるだけじゃないの！？勝手に自分はこうだって、決めつけて逃げてるだけにしか思えない！」
ああ。やっぱり、Aには全部お見通しって訳だ。
「モモくんは、Re:valeで居続けたいんじゃないの！？ユキくんの隣で、歌いたいんじゃないの！？だったら……！うわっ、」
でも、それがどうにも腹立たしく思えてきて。俺は力任せにAの腕を掴んで押し倒していた。
「ちょっ！モモくん！？」
「……れ、」
「え？」
「ちょっと、黙れ」
「モモくん……？……っ！」
彼女の両手首を強く押さえ込んで、自分のそれを押し当ていた。これ以上、彼女の口から聞きたくなかった。
「ん、っ……」
「……」
「んん！」
歯列をなぞり舌で割ろうとして、彼女がビクリと身体を震わせた。それにハッと我に返る。こんなの、ただの八つ当たりでしかなかった。
「……っ……ごめん。……やっぱり、一人にして」
「モモくん……」
「ごめん、A」
パッと離したAの手首は少し赤くなっていて。それから目を逸らすように彼女の部屋を出た。
「……くそっ」
エレベーターホールまできて、壁を殴る。感情に流されてしまった。もしかしたらあのまま最後までやってしまっていたかもそれない。ただの八つ当たりで。
「なにやってんだよ、俺……」
Aは俺のことをおもって言ってくれていたのに。オレはそれを拒否してしまった。……ああ、明日からどんな顔して会えばいい。
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作者名：凛々瑚 | 作成日時：2018年3月16日 23時
