検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:15,379 hit

6 ページ6

「Aー」

手に持っていたスマホを伏せ、バッと顔を上げる

「あ、…はい」

「バスタオルそこ置いといてくれない?」

「わ、かりました」

自然に返せただろうか
胃がキリキリと痛む
あの女性の顔が頭をよぎる

私の脳内をある2文字が支配した

浮気

いや、いやいや、五条さんに限ってそんな事あるはずが
じゃあさっきのメッセージは?
むしろ五条さんだからこそあり得るんじゃないの?
そんな声が頭に響いてくる

だって、私は五条さんの恋人で、好きって言ってもらえて、毎日連絡だって

本当に?

その好きって本当に五条さんが心から思ってるの?
本当は適当に捌け口にするために甘い言葉を吐いていたんじゃないの?
そんな事を高速で考える脳みそは、ペタペタと近付いてくる足音とともに止まった

「ふ〜、スッキリした」

数分前なら水が滴らずともイイ男な彼にこちらがのぼせ上がっていたのだろうか
冷え切った爪先を擦り合わせながら考える

「お腹すいたー。A、今日のご飯なに?」

心の底から楽しみです
という表情で私を見つめる彼

「あ、…今日、は、クリームシチュー…です。私の、得意料理、なので」

詰まり詰まりに答えると、少し訝しげな表情をしながらも大人しく席についてくれた彼にほっとする
急いで台所へ向かおうとすると

ピロリン

背筋が凍る
胸がきゅっと締まる

また、あのみなという人からだろうか
彼はなんと返すのだろう
私は彼に背を向けたまま
大好きなはずの彼の顔を見ることも叶わず、台所へ逃げ込んだ

それから私達は
向かい合って食事を済ませ
恋人のように2人で洗い物をして
私は風呂に入り
彼の待つ寝室へと足を運び

彼に抱かれた

何度も
何度も何度も
片思いの時から夢に描き続けた瞬間で
私が彼女未満から彼女になれた幸せな瞬間のはずだった
涙が溢れて止まらなかった

本当に止まらなかった

胸が苦しくて

しんどくて

息がうまくできなかった

縋るように彼を求めて

愛されてると偽りたくて

自分に汚い嘘を吐いた

行為の最中、カーテンの隙間から覗く窓に反射して私が写った

色に溺れて我を忘れ、夢を夢だと知ったその女の姿はひどく





ひどく惨めだった

7→←5



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (66 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
189人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナノ | 作成日時:2021年4月21日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。