むらさきいろのきおく。2 ページ26
『あ、うぁ、……っごめ、ごめんなっさい!』
『っ別にいいよ。大丈夫、気にしてないから』
『う、おねが、きらいに、ならないでっ!』
Aが泣いてるのを見るのは久しぶりだった僕は、内心かなり焦っていた。
何か言わなきゃ、ととっさにあの言葉が出たんだけど、Aはそれを全く聞いてなくて。
幼稚園児みたいにぐすぐすと鼻をすすりながらさらに涙の量を増やした。
『きらいになんてなるわけないだろ、これぐらいで』
『っいちまつにいちゃん、いち、にー、ごめんなさい、ごめ』
『〜っあーもう、あやまるの禁止。大丈夫って言っただろ?』
『うぅー……っ』
『ほら目もこすらない。はれたらみんな心配するから』
泣き止もうと必死に目をこするAの手をぎゅっと握りながら、昔の僕はポケットの中に手を突っ込み何か良いものがないか漁った。
『!』
そして中に入っていたのは、だいぶ前にジュースを買ったときのお釣り。
しかもそれが、ちょうど棒アイスを一本買えるぐらいのお金だった。
昔の僕は、ラッキー!と小さくガッツポーズをする。
『にー、ちゃん?』
『A、ちょっと待ってて。買い忘れたものあった』
『……ぼくも、いく』
『大丈夫、すぐもどるから』
そう言いながら頭を撫でようと手を伸ばして、引っ込めた。
さっき払われたばっかなのにまたやったらただのアホだ。
代わりにできるだけ優しく安心させるように笑うと、こくっと小さく頷いてくれた。
それ見てほっとしながら、昔の僕は走り出す。
『(A、喜ぶかな)』
弟の笑顔を、思い浮かべながら。
*
『ただいま』
『あ!にいちゃん、おかえ……り……』
ぼーっとしながら近くのベンチに座ってるAを見て、大分落ち着いたなと安心しながら、昔の僕はAに駆け寄った。
それに気づいてばっと顔をあげて固まったAの視線は、昔の僕の手の先に向かっている。
その手の先にあるのは、もちろんアイス。
てかここで違ったらもう僕は人として終わってると思う。
『はいこれ、あげる』
『っえ、え?なんで、』
『あ、さっきのはうそだよ。Aを驚かせたかったから』
『うえぇ……?』
混乱してるAの手にアイスを握らせた昔の僕は、よいしょと隣に座る。
『ほら、はやく食べないととけちゃうよ』
『でもにいちゃんのぶんが……』
『僕はAに買ってきたんだから、Aが食べて』
『……ありがとう、にーちゃん!』
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紫垣(プロフ) - 続きが欲しすぎる (4月19日 19時) (レス) @page41 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
はまち(プロフ) - ヤバい目から水銀出てもうた。゚(っ৹ т )゚。 (2022年10月25日 23時) (レス) @page41 id: 060e95838b (このIDを非表示/違反報告)
しろりん(プロフ) - しばらく更新されていないので心配です…。夢主くん…助かって、お兄ちゃん達と仲良くしてほしい…。(๑o̴̶̷᷄-o̴̶̷̥᷅ ) (2022年3月19日 19時) (レス) id: 5f15beaff6 (このIDを非表示/違反報告)
折り紙(プロフ) - 目から水素水がァ…。更新頑張って下さいィ…。 (2018年8月4日 3時) (レス) id: 0b0984a937 (このIDを非表示/違反報告)
かすてら(プロフ) - この小説とても好きです!続き待ってます(*´-`) (2018年7月18日 16時) (レス) id: f0c376a462 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:●龍● | 作成日時:2017年1月10日 16時