Blue ▽ 確信犯 ページ9
・
『姫様、お待ちを!私はあなた様のことを、心から愛しているのです...!』
『...私は、あなたと共には生きられない。禁断愛なんて、そんなものでしょう?』
『ああ、お愛しい姫君よ、こんなところで何を...おや、そちらは?』
『伯爵様...いえ、ただの従者ですわ。さあ、ホールへ戻りましょう』
『姫様っ!!』
・
「...うわあ、懐かしー」
「なに見てるんだ?...ああ、台本か」
背後からのぞきこまれる。
私が見ていたのは、高校の演劇部時代の台本。
大掃除真っ只中。
恋人のカラ松に手伝いに来てもらったはいいものの、思い出に浸ってしまい全く進まない。
「もう五年以上前か」
「これ私姫役やったー。カラ松は?」
「俺はこの伯爵だ」
...と、突然カラ松の目が輝く。
嫌な予感しかしない。
「なあ、これ、やらないか?」
「は!?これ、って...私が姫であんたが従者ってこと?」
「そう、確かもっと甘いシーンあったよな。従者やりたかったから、よく覚えてる」
「...一応聞くけど、なんで?」
「Aとキスできるから」
「やっぱ聞くんじゃなかった!」
...どうしても、ダメか?
そんな目で見つめられても、屈したりなんか...
屈したりなんか、するわけ...
「...ちょっとだけ、だからね」
「ほんとか!?」
案外簡単だわ私。
くそう、さらば私のプライド。
「じゃあ、ここ。Aからだな」
「えーと...『やっぱり、私はあなたを選べない...もう行かなくちゃ...』」
「『それなら...せめて、今は...私だけの姫様でいてくださいますか...?』」
「『...どうして、私をそんなに好いてくれるの?私は、何度もあなたを裏切ったのに...』」
「『...私はもう、姫様しか愛せないのです。姫様以上に愛したい人など、きっと現れません』」
演じるうちに、役に入り込んでいく。
私の悪い癖。のめり込むとまわりが見えなくなる。
「『私なんかより、もっといい人がいるはずなのに...物好きね』」
「『なんと言われようと構いません。私が愛せるのは、あなた様ただお一人なのです』」
引き合うように、どちらからともなく唇を重ね合わせる。
薄く瞼を上げれば、閉じられたカラ松の瞳。
顔を少し離して、至近距離で言葉をかける。
「...あんた絶対狙ってたでしょ」
「さあ、なんのことだ?」
そう笑って、もう一度、と重ねる。
今度は従者と姫じゃなく、彼氏彼女の関係で。
・
Pink ▼ 1から始めませんか→←Purple ▼ 愛という名の花束を
477人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のんのーー(プロフ) - この作品……すごく好きです!あの、「可笑しいくらい君が好き」って嵐さんのキャラメル・ソングですか? (2017年12月19日 20時) (レス) id: c41abcf11d (このIDを非表示/違反報告)
凜松 - こんにちは〜♪凜松です このお話し大好き (2017年2月15日 11時) (レス) id: 2a608cd23b (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 文才分けて欲しいです‥‥すごすぎます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ (2017年1月9日 23時) (レス) id: 6118d92b47 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - どの作品もすごくよかったです! 精神回復しましたww (2016年10月19日 23時) (レス) id: fd37f4a3ac (このIDを非表示/違反報告)
オムちゃん(プロフ) - 夜月さん» やいやもうすごく良かったです!! 許すも何も最高でしたよ(*Ü*) ありがとうございました!! (2016年10月10日 5時) (レス) id: 87fbbdacd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜月 | 作者ホームページ:http://plas-yuno08.jimdo.com
作成日時:2015年11月8日 3時