Purple ▼ 愛という名の花束を ページ8
※ブラックサンタの話。
・
はあ、と一つため息をつく。
吐いた息は白くなって、冷たい冬の空気に溶けていく。
聖夜、それは恋人たちが過ごす性なる夜であり、僕みたいな燃えないゴミにはまったく関係ない。
今日は何回発火したか。回数なんて数えてないけど。
「あー...つまんね。帰ろ」
呟いてベンチから立ち上がろうとしたところで、後ろから抱きつかれる。
何事だと振り返れば、
「ブラックサンタさん!メリクリ!」
なんて言って笑う、愛しい人の姿。
...愛しい人、とはよく言ったものだ。
気持ちの欠片も伝えられないヘタレのくせに。
「メリクリじゃねーよ...なんでこんなとこいんの」
「ひっど!せっかくこんなかわいいサンタさんが一松にプレゼント届けに来てあげたのにー」
サンタ...どう見ても普通の冬ファッションだろ。
じと、と不審気に見つめると、対照的ににっ、とAは笑う。
「欲しい?私からのプレゼント」
「...どっちでもいいけど」
「一松が私にまだ言ってないこと言ってくれたらあげる!」
いや、別に欲しいとか言ってないんだけど。
...言ってないこと?って?
「ほーら、早く!」
「え、あ...」
...まさか、知られてたのか。軽く死ねる。
頬に全身から熱が集まってくるのが分かって、顔を押さえる。
「あー...A、」
「ん?」
「その...こんな感じで言うのずるいけど、...ずっと前から好きだった」
ああ、言ってしまった。
何年間もずっと秘めていたのに。
こんなクズじゃ釣り合わないって、諦めてたのに。
「うん、知ってるよ」
「...知ってんだ」
「へへ。じゃあちゃんと言ってくれた一松くんには、プレゼントあげなきゃだね」
「...なに、それ」
いちまついちまつ、あのね、
僕の耳元に口を寄せたかと思うと、ほんの一言、吐息とともに耳に届く。
...は、
「......うそ」
「ほーんと。びっくりした?」
「...した......嘘じゃないの」
「ほんとだって」
赤くなっているだろう頬に柔らかいものが押し当てられて、...一瞬、何が起こっているか分からなくなった。
「プレゼントは私ー...なんてね」
笑うAの顔も赤い。
二人して赤くなった僕たちは、その聖なる夜、恋人たちに仲間入りを果たしたのだった。
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のんのーー(プロフ) - この作品……すごく好きです!あの、「可笑しいくらい君が好き」って嵐さんのキャラメル・ソングですか? (2017年12月19日 20時) (レス) id: c41abcf11d (このIDを非表示/違反報告)
凜松 - こんにちは〜♪凜松です このお話し大好き (2017年2月15日 11時) (レス) id: 2a608cd23b (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 文才分けて欲しいです‥‥すごすぎます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ (2017年1月9日 23時) (レス) id: 6118d92b47 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - どの作品もすごくよかったです! 精神回復しましたww (2016年10月19日 23時) (レス) id: fd37f4a3ac (このIDを非表示/違反報告)
オムちゃん(プロフ) - 夜月さん» やいやもうすごく良かったです!! 許すも何も最高でしたよ(*Ü*) ありがとうございました!! (2016年10月10日 5時) (レス) id: 87fbbdacd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜月 | 作者ホームページ:http://plas-yuno08.jimdo.com
作成日時:2015年11月8日 3時