Green ▼ これから君と歩いてく ページ30
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桜の木の下で笑う2人。
確かこれは、高校の入学式の日。
「……あの頃は若かったな」
「おっさんくさい発言だなあ」
「うっさいばか」
アルバムの1ページを見つめて、そんな軽口を叩く。
若かった、なんて言うけど、あの頃と何も変わらない。
ほんの少し他の兄弟よりも小さめな黒目と、への字型に曲がった口元、……ああでも、前より素直じゃなくなったかな。
「こっちは……修学旅行だ。懐かしいな」
「……お前が京都市中で迷子になったやつな」
「……聞こえなーい」
「おいこちとら血眼になって探したんだぞ。勝手に消えんじゃねえよ」
「はいはいありがと。いーじゃん無事見つかったんだし」
「お前が言うな!」
その後も説教じみた言葉を並べるチョロ松に唇を尖らせて、またアルバムをめくる。
……やられっぱなしは癪に障るので、そのまま頬にちゅーしてやった。ぽかんって顔してた。ざまぁ。
「おっ……前なあ……」
「あ、もう卒業式じゃん」
「なあ無視?勝手にキスしといて無視?」
「六つ子で写ってる!この頃からもう六人六様の個性があったんだね」
「徹底的に無視かよ!」
机を叩くチョロ松は本人の言う通り徹底的に無視して、またページをめくる。
今度のページに写っていたのは、
「……へへ」
「……色気ない声出してんじゃねえよ」
「だって、にやにやしちゃうでしょ?」
「……まあ、するけどさ」
「ほら!人のこと言えないよ?」
「いちいち言うなよばか!」
ふたり揃って顔赤くして言い合って、何やってんだか。
でもまあ仕方ないよね。
次のページに写っていたのは、純白のウエディングドレスを着た私と、白のタキシード姿の彼。
このページ以降は、まだ真っ白なまま。
何の写真も貼られていない。
だけど、これからは、二人だけじゃなくて、未来ではきっと、もっと。
「……写真、撮る?」
「撮りたい!記念すべき2人の新居だもんね〜」
「超狭いけどな」
「今度はもっと広い部屋にしよ!2人じゃ広すぎるくらい!」
「2人で使う気なんてないだろ」
「もちろん!その頃には家族も増えてるよ、きっと」
「……うん、」
顔を見合わせて微笑みあえる、この空間が愛おしい。
今度は不意打ちじゃなく、引かれ合うように唇同士を触れ合わせる。
面倒でも自意識ライジングでも、君だけが好きで、君だけを愛してるよ。
カメラを持った左手の薬指には、輝く白金の指輪が嵌められていた。
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のんのーー(プロフ) - この作品……すごく好きです!あの、「可笑しいくらい君が好き」って嵐さんのキャラメル・ソングですか? (2017年12月19日 20時) (レス) id: c41abcf11d (このIDを非表示/違反報告)
凜松 - こんにちは〜♪凜松です このお話し大好き (2017年2月15日 11時) (レス) id: 2a608cd23b (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 文才分けて欲しいです‥‥すごすぎます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ (2017年1月9日 23時) (レス) id: 6118d92b47 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - どの作品もすごくよかったです! 精神回復しましたww (2016年10月19日 23時) (レス) id: fd37f4a3ac (このIDを非表示/違反報告)
オムちゃん(プロフ) - 夜月さん» やいやもうすごく良かったです!! 許すも何も最高でしたよ(*Ü*) ありがとうございました!! (2016年10月10日 5時) (レス) id: 87fbbdacd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜月 | 作者ホームページ:http://plas-yuno08.jimdo.com
作成日時:2015年11月8日 3時