Pink ▼ 冬の日の温もり ページ18
・
2月も下旬に差し掛かったけれど、未だこんなに寒いのは毎年のことだったっけ。
とにかく、寒い。もう大丈夫だろうとマフラーをしなかったのが悔やまれる。
「さむ...わっ、すごい息白い」
刺すような寒さに耐えきれず、手袋をした手に息を吹きかける。
いくら手袋をしていようと、寒いものは寒い。
そうやってどうにか暖を取っていると、向こうから小走りで向かってくる影が見えた。多分、私の待ち人。
「A！ごめんね、待たせて！」
「あ。も〜、遅いよトッティ」
「トド松って呼んでって言ってるじゃん...まあいいけど。それより、首もと寒そうだね？」
その人...まあ、いわゆる私の彼氏であるトド松は、そういう細かいところにすごく気が利く。
だから女の子ウケがいいんだろうな、と他人事のように考えながら、首を縦に振った。
「うん、マフラーしてくるの忘れちゃって...」
「もー、そういうところ抜けてるよねえ、A。寒くない？」
「別に抜けてないし、もう大丈夫かなって思っただけだし。...そんなに寒くない」
嘘だ。ほんとはかなり...すごく、寒い。もともと寒がりなくせに、今は薄めのコートと古い手袋しか防寒具がないし。
だけど、トド松に言えば優しい彼は自分のマフラーを私に巻いてくれちゃったりするから、強がっていたかった。
「ふうん？僕に嘘つくんだ？」
...即効バレた。
トド松は、自分の手を私の耳にあてがう。
その手のひらの熱が、じんわりと肌に染み入ってくる。
「...こんなに耳真っ赤なのに、寒くないわけないでしょ」
「と、トド松...」
「ねえ、今日はおうちデートにしない？僕、久しぶりにAの家行きたいな〜」
「...いい、よ」
よし！と呟いてからトド松は手を離し、それを私の手と重ねた。
「じゃあ、着くまで僕がAの手をあっためてあげるね！」
「...ありがと」
その温かい手のひらは、トド松の心を表してる気がした。
手、離したくないなあ。なんて考えながら、私と彼は家までの道を歩き始めた。
・
Blue ▽ ゆらゆら揺れる恋みたいな→←Green ▽ 素直じゃないけど好きでいて
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 477人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のんのーー(プロフ) - この作品……すごく好きです！あの、「可笑しいくらい君が好き」って嵐さんのキャラメル・ソングですか？ (2017年12月19日 20時) (
レス) id: c41abcf11d (このIDを非表示/違反報告)
凜松 - こんにちは〜♪凜松です このお話し大好き (2017年2月15日 11時) (レス) id: 2a608cd23b (このIDを非表示/違反報告)
聖奈 - 文才分けて欲しいです‥‥すごすぎます･:*+.\(( °ω° ))/.:+ (2017年1月9日 23時) (レス) id: 6118d92b47 (このIDを非表示/違反報告)
シヴァ - どの作品もすごくよかったです！ 精神回復しましたww (2016年10月19日 23時) (レス) id: fd37f4a3ac (このIDを非表示/違反報告)
オムちゃん(プロフ) - 夜月さん» やいやもうすごく良かったです!! 許すも何も最高でしたよ(*Ü*) ありがとうございました!! (2016年10月10日 5時) (レス) id: 87fbbdacd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜月 | 作者ホームページ：http://plas-yuno08.jimdo.com
作成日時：2015年11月8日 3時
