貴方の傍で。２【手下】 (ページ30)

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６９話(夢) ページ30

目を覚ますと、何もかもが真っ黒な世界だった

…あぁ、ここが現実なんだ

そうぼんやり考えていると、小さい一つ結びの女の子と…

背中に鴉の羽、頭に角の生えた男の子が何か楽しげに話していた。

なんだか、マルフィに似てるなぁ…

何の話をしているのかな…と、少し聞き耳を立ててみる。

男の子「ねぇ、知ってるかい？

女の子は、愛している男の子に【月が綺麗ですね】って言われたら

【私死んでもいいわ】って返すと、結ばれるって！」

女の子「なぁに、それ。
ロマンチックだね！

じゃあ私、君に【月が綺麗ですね】って言われるような立派な女の人になる！」

男の子「本当？

じゃあ、君が素敵なレディになったら【月が綺麗ですね】って言うよ！」

女の子「うん！」

あぁ、あんなに小さい子達ですら幸せそうにしているのに、僕は何なんだろう。

２人の背中を見つめていると、男の子の背中が急に大きくなって…

A「何でマルフィに…」

マルフィは、こっちに気が付いたようでニコニコと微笑みながら近付いてきた。

マ「君もだよ。

愛している人に【月が綺麗ですね】と言われたら、【私死んでもいいわ】と言うんだ。
そうすればきっと、願いは叶う。

…あぁ、でも。

その相手が、「そんな事言わないでよ！？」と焦っていたら…

それは多分、君の思い違いだ。

また会おうね、レディ」

そう言って、マルフィは女の子に寄り添いながら消えていった。

また会おう、って？

いつも会っているじゃないか。
それに、僕のことを知らないようなフリをして…

【現実】

A「…あ」

そう思った瞬間、目が覚めた。

あぁ、今のが夢だったのか…
少し安心した。

夢の中のマルフィは、どうして僕にあんなことを言ったんだろう。
愛している人なんて、マルフィしかいない。
そう考えると、また悲しくなってきた。

時計を見ると、まだ夜の７時半。

A「お風呂、入りに行こうかな」

汗や涙を洗い流したい。
そう思ったから、ドアを開けようとした瞬間にまたノック音。

A「っ、誰、ですか」

マ「私だよ、入ってもいいかな？」

A「…どうぞ」

あぁ、僕はなんて馬鹿なんだろう。
今彼の声を聞いたら、涙が出るに決まっているのに。

マ「ありがとう。

…えっと、A」

A「何…？」

マ「その…明日の夜、１２時ぴったりに、私の部屋で月を見ないか？」

A「…え？」