双子と司書さん【ハイキュー】 (ページ10)

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彼の中にあるものは、ページ10

翌週の月曜日、昼休み。
静かに漫画を読んでいる生徒たちと私以外は誰もいない、いつもの昼休みだった。

そう、双子が現れるまでは。

「久しぶりやなぁ、三枝センセ」
「……1週間くらいしか経っていませんよ」

相変わらず、語尾にハートが付きそうなくらい甘ったるい声音だった。かわいこぶってるとしか思えない。

もちろん隣には治くんもいた。
不機嫌そうな顔をしているので、おそらく1人で来ようとしたところを片割れに見つかったのだろう。約束をしたのは彼1人だったし。

「先生、試合見に来てくれるん？」
「……まだわかりません。時間があれば」

言葉を濁したけれど、興味が湧いてしまっているのは確かだ。
県予選の決勝だと言っていたが、どの程度人が集まるものなのだろうか。双子は校内中で人気だし、そもそもバレー部は強豪だし、ブラスバンドやチアも応援に行くのならば私の入る隙などないのでは？とさえ思う。

それに、私のような半端者が行くのは選手にも応援団にも失礼だ。

「下らんこと考えとらんで、ええから来て下さいよ」
「おい、侑」

またもや彼の言葉に驚かされた。
下らないこと、なんて。私の考えていることなどお見通しだと言わんばかりの鋭い眼光は、私の中の彼のイメージを一変させた。

「絶対見惚れてまうようなプレーしたるんで」

その自信は、本物だろう。
彼はきっと、とてもすごいプレイヤーなのだと確信せざるを得なかった。

「……わかりました」

折れる他ない。むしろ見に行かなかったら面倒なことになりそうだ。

なんていうのは建前で、本当は彼自身に興味が湧いてしまったのだ。
私の返事を聞くと、侑くんはにっこりと笑って子供らしく喜んでみせた。

けれどその姿はもう、以前の彼と同じとは思えなかった。

予鈴が鳴り、2人は教室へと戻って行った。
日時や場所なんかを教えてもらったが、全校応援があるのなら職員会議でも話は聞けるだろう。

ああ、そうか。

私は今、わくわくしているのだ。

(……いつ以来だろう、)

人の想像した世界以外に、こんな感情を抱くのは。
現実世界の人間に、こんな感情を抱くのは。

「わざとですか？」

少ししてから戻ってきた茶色い髪の彼に、わざとらしくカウンターに置いてあったスマホを差し出す。
私の言葉を聞くと、やはり彼はバツが悪そうに目を逸らした。