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愛すべきは、 ページ33

「治だけずるいわ!俺ん時は笑っとらんかった!」
「普段の行いの差や、よぉ覚えとき」
「はぁ?俺の何が悪いっちゅーねん!」
「図書室ではお静かにお願いしますね」



笑ってしまったのは侑くんのせいでもあるのだが、それを口にしたところで調子に乗るだけなので黙っておいた。

かわいい、という言葉で喜んでくれるか不安ではあったが、満更でもないらしい。治くんはわかりにくく喜んでいた。
これで2人共満足してくれただろう。





「じゃあまた明日、先生の誕生日祝ったりますから」
「エッ、先生明日誕生日なん?」
「あっ、しまった!言わなよかった!」



何が不満なのか。自分1人で私の誕生日を祝いたかったのか。

いや、それより、
2人は私の誕生日を祝ってくれるつもりらしい。

それはとても喜ばしいことである気がしたし、迷惑なことである気もした。とにかく複雑で面倒くさいのだ、私は。



「別に、私のことはいいですよ……誕生日を喜ぶような歳でもありませんから」
「えー、そんな寂しいこと言わんといてや」
「そうですよ、俺らが盛大に祝ったりますから」



盛大にされるのは普通に迷惑だと思ったが、楽しそうな2人に水を差すのも気が引けた。やはり私は黙るしかない。

目の前で話し込む2人を交互に見る。
見た目に限って言えば、彼らはよく似ていた。けれどそれは見た目だけで、中身は似ても似つかない。

それでも、根本はやはり同じなのだろう。最近はそう考えを改めた。





「期待しないで待っています」
「なんでやねん。ちゃあんと期待しといてや」



自分がショックを受けないように、という意味だったのだが。
何をしてくれるつもりなのか知らないが、まあいい。



予鈴が鳴ると、2人は大人しく教室に戻って行った。
数名いた他の生徒たちもいなくなり、図書室に1人きりになる。


最近は、この時間が静かだと感じるようになっていた。
双子が現れるまではこの静寂が普通で、私はそれを愛してすらいた。彼らのことを喧しいと思っていたのに、今では180度逆だ。
侑くんと治くんがいることが普通で、この静寂は束の間のもの。
少し前までは昼休みすら読書に耽っていたのに、今ではその暇もない。2人のどちらか、あるいはどちらもが姿を現すからだ。

そして何より私は、あの静寂を取り戻そうとしていない。



(……やっぱり私は、)



彼らに、侵されてしまっている。

精一杯の言い訳→←お望みどおりに



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作者名:凛久 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/2594um/  
作成日時:2019年2月14日 17時

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