双子と司書さん【ハイキュー】 (ページ22)

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甘く溶けたページ22

久々に見た三枝先生は、いつもと雰囲気が違った。

何故だろうかと少し考えてから、すぐに髪を結んでいるからだと納得した。
彼女は大きな段ボールを抱えていた。暑い中荷物を運ぶのは大変だろう。特に先生のような華奢な女性には。
そう思ったから、持ち前の優しさで手伝いを買って出ただけだ。

図書室はとても涼しかった。
カーテンは締め切られていて、俺ら以外に人もいない。何より静かだ。ここだけ学校から切り取られてしまったみたいに。

俺がクラスに戻りたくないと言ったことを、彼女は諭したりしなかった。
普通なら「教室に戻りなさい」なんて言うところを、「サボっていきますか」などと言う。先生は普通じゃないのかもしれない。

「治くん、手を出して下さい」

そう言った彼女の右手には何かが握られていた。それに届く距離まで近付く。

漂う甘い匂いにくらりとした。
いつもは見えない首元＿＿＿＿うなじの部分が露わになっている。外で動いていたせいでかいた汗はまだ引いていなかった。

あかん、考えるな。
理性を保つため、思考をシャットアウトする。うなじに目を向けるのを止め、彼女の右手に集中した。匂いだけはどうにもならなかったけれど。

ころりと姿を現したのは、1口サイズのチョコレートだった。コンビニとかスーパーで売られている、誰でも食べたことがあるようなやつ。

「なんすか、これ」
「お礼です。ここまで運んでくれてありがとうございました。結構重くて参ってたんです」

どうやら迷惑ではなかったらしい。むしろお役に立てたようで何よりだ。
微笑んで礼を言う彼女は、やはり美しかった。
手のひらの上のチョコレートを見ながら、口を開く。

「いつも持っとるんですか」
「……まあ」

彼女にしては歯切れの悪い言い方だった。

「甘いもん好き、とか」

なんとはなしに放った言葉に、彼女は大袈裟に反応した。
好きなんだな、と確信した。

「……誰にも言わないで下さいね。仕事の合間に食べてるのがバレたら、怒られちゃいますから」

彼女らしくない、かわいらしい発言に思わず頬が緩んだ。
甘いものが好きだというのは、少し意外ではある。けれど先生は女の子だし、別に驚くほどのことじゃない。それでも彼女は恥ずかしいようで、口元に人さし指を当てながら言った。

「秘密にします」
「……約束ですよ」

よく食べるはずのチョコレートは、何故かいつもより甘い味がした。