一輪の花 【 善逸 】 ページ32
『 ぜん…っ、善逸っ!! 』
まだ外の空気は冷たく、少し薄暗い明け方
もう少しで朝日が昇る頃に
『 こんなに傷だらけで…! 』
ぼろぼろになったその身を引き摺るようにして蝶屋敷に帰ってきた、私の恋人
「 A、ちゃ… 」
『 ああもうっ、喋らなくていいから 』
駆け寄る私に手を伸ばす善逸を、傷が痛まないよう支えれば
傷のせいか少しぎこちないけど安心したように笑う
そんな善逸を休ませるため、ベッドのある部屋に連れて行く
『 とりあえず応急処置ね 』
「 い…ッ!! いでぇえぇッ 」
『 我慢して 』
この時間は流石にアオイちゃん達は眠っているから取り敢えず包帯と塗り薬で応急処置
『 一応これでよし、と
後でしのぶさんに診てもらってね 』
「 う、うん
ありがとう 」
そう言いながらベッドに横になる善逸を見て、一安心
『 馬鹿 』
本当に心配、したんだから
聞こえないくらいの小声でそう呟く私の目からは涙が静かに溢れる
「 Aちゃん 」
『 ! 』
「 ごめん、泣かないで 」
ベッドに横になっていたと思った善逸がいつの間にか起き上がり、私の腕を強く引いて抱き締める
『 ぜん、』
「 ごめんね、俺ほんと馬鹿だよな 」
ああこいつは、耳がいいんだった。
さっきの声も、私が泣いてるのも
音で分かっちゃうんだった
「 こんなに心配かけて、ぼろぼろで帰ってきてさ
かっこ悪いし、恋人として最低だよな 」
『 っ、そんなこと 』
「 ごめん
ごめんね、Aちゃん 」
傷、まだ痛むはずなのに
そんなの関係ないみたいに抱き締められる
「 これ、さ
任務中に見つけたんだ 」
『 な、に 』
そう言いながら手渡されたのはとても綺麗な一輪の花
「 Aちゃんに似合うと思って 」
でも花を傷つけないように戦ってたら苦戦してさ
なんて
『 ば、馬鹿善逸!
嬉しいけど、花なんかよりッ 』
自分を大切にしてよ馬鹿
また涙を流す私の頬に手を置いた彼
「 でもさ、どうしてもこの花Aちゃんにあげたくて 」
傷一つないその綺麗な一輪の花に、善逸の優しさが詰まっているように思えて。
「 要らなかった? 」
『 も、もらう
けど次からは! ちゃんと自分優先して!! 』
私の言葉にごめんね、と謝る善逸
花と彼がどうしようもなく愛おしくて
強く抱き締めた
「 アッ! いででででッ 」
『 あ、ごめんっ 』
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しゃび(プロフ) - ミミさん» コメントありがとうございます。1から見ていただけて嬉しいです!個人的に一番炭治郎のお話を書くのが難しいと思ってるのですが、この作品で更に好きになって頂けたようで嬉しく思います。 忙しくて中々こちらに来れないのですが、後ほどボード確認しますね! (2020年3月26日 11時) (レス) id: f924ce756f (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - 1からイッキ見しました!しゃびさんの作品で以前より炭治郎が好きになりました!ボードにも数日前に書き込みましたので見てって欲しいです。好みどストライクでした! (2020年3月26日 10時) (レス) id: ddeda9ef75 (このIDを非表示/違反報告)
しゃび(プロフ) - あいすさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。続編も期待してくださってありがとうございます。私個人としても続編を作りたいと思っているのでそちらが出来た際にはお暇な時にでも読んでいただけたら嬉しく思います! (2020年3月23日 1時) (レス) id: f924ce756f (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 完結おめでとうございます!!この作品大好きなので、続編期待しています! (2020年3月22日 16時) (レス) id: 3a45dfb233 (このIDを非表示/違反報告)
しゃび(プロフ) - ミナさん» コメントありがとうございます。沢山の方々に読んでいただけたおかげで楽しく最後まで書くことが出来ました。続編は後々作ろうかなと考えていますので、そちらが出来たらまたお暇な時にでも読んでいただけたら幸いです。 (2020年3月21日 22時) (レス) id: f924ce756f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃび | 作成日時:2020年1月15日 19時