【d!】有能秘書奮闘日記 (ページ10)

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致し方なしページ10

階段を降りて部屋に向かう途中の廊下
向かい側からチーノが歩いてきた
タイミングよ…
でも普通にすれ違うだけならバレない、はず
あっちはあたしに気付いてるし、ここで踵を返せば逆に怪しく思われる

ci「あ、A先輩！」

『おつかれ、チーノ』

そう挨拶してすれ違うだけのはずだった

ci「これから一緒に食堂行きません？」

あたしの前に立ち塞がるチーノ
咄嗟に首を抑えて痕を隠した

『あたしちょっと用事あるから、先に行ってて』

ci「…じゃあついて行きますよ？」

『あー、その…えっと…』

チーノはあたしの顔を覗き込んで目を細める
綺麗な橙があたしを貫く

ci「言い淀むなんてA先輩らしくないですね、なんか隠してません？」

チーノはあたしの手首を掴んだ
首元をじっと見つめて、いつもより低い声で言った

ci「一体誰が？」

『…グルッペン』

ci「え、おふたりってそういう…」

『違う！…ちょっと隙を見せたあたしが悪いの』

ci「ふーん」

チーノが痕を指でなぞる
バレたくなかったな

『誰にも言わないでくれる？』

ci「いいですよ」

あれ、意外とすんなり意見が通った

ci「…但し、俺にも痕つけさせてくれたら」

やっぱりすんなりいかなかった
こういうとこあるのよ、この子
しかしなんでまた…

『どうしてそんなに痕つけたがるのよ』

ci「ダメなんですか〜？」

にやにやと笑うチーノ
メイクで隠せばいいだけだから、いいかな

『もう好きにしなさい』

ci「やった！」

あーあたし、ショッピとチーノには弱いな

身長差があるから、チーノはかなり屈んであたしの左側の首元に顔を埋めた
今日2回目の感覚

ci「あー俺、A先輩の匂い好き」

『…1日の終わりだしあんまり嗅がないでくれる？』

ci「それがいいんですけど」

『はぁ？どうでもいいけどそこで喋らないで』

あたしの言葉にくすくす笑うチーノ
随分と楽しそう
しかしすぐにチクリと痛みが走った

ci「…できた」

チーノは離れてその痕を愛おしそうに撫でた
初めてのことなのに1日2回も、しかも別の人からされるなんて

『満足？』

ci「はい！」

『それなら約束は守りなさいよね』

ci「もちろん」

にこりと笑うチーノにため息をついて自室へ向かった
「待ってください〜」と着いてくるチーノを無視して。