不器用な愛 ページ15
ついた先はシッマの自室
中に入るとタバコの匂いが漂う
散らかっていて机の上には書類だらけ
kn「ん、そこ」
シッマがベッドを指さしたので大人しく座った
まさか書類手伝えとかそういう交渉?
首を傾げていると錆び付いた救急箱を持ってあたしの隣に腰を下ろした
ギギギ、と音を立てて救急箱を開く
kn「えーっと、どうすればええんや…」
悩みながら冷却シートを手に取って、あたしの手首に巻いた
嘘でしょ、あのシッマが手当てを?
『…人間って驚きすぎると声が出ないのね』
kn「何に驚いてんねん、俺やってこれくらいするわ」
『嘘ね』
kn「…なんでわかってん」
『救急箱が錆び付いてるのがその証拠よ』
シッマは少しムッとしてあたしを見た
その後、少し照れたように目をそらす
なんだか犬に見えてきた
kn「…初めて人に手当てとかするから下手やけど、なんもせぇへんよりええやろ」
頭を悩ませながら包帯をぐるぐる巻く
不器用すぎてぐちゃぐちゃ
でもなんだかそれすらも愛おしく思えた
kn「なにわろてんねん」
『下手すぎて笑ってる』
kn「初めてや言うたやろ!」
『そもそもこの処置の仕方正しいの?』
kn「わからへん…でもとりあえず冷やしとったらええんちゃう?」
冷却シートも放置されていたからあんまり冷えてないし、なんだかただ手首に包帯を巻いただけな気がする
手当ての終わった手首を見る
乱雑に巻かれた包帯、今すぐにでも取れそう
『…ありがと』
kn「お前から感謝の言葉を聞けるとはやった価値あったな!」
大声で笑うシッマの頭にチョップする
『調子に乗らない』
kn「すんまへん」
『今日の分の書類をしっかり終わらせること。トントンにこれ以上、苦労かけないこと』
そう言い残して部屋を出た
最後に気の抜けた返事が聞こえた
パタン、と閉めた扉に背を預けてもう一度手首を見る
なんだか口角が上がってくる
『怪我も悪くないのかも』
そう呟いて、総統室へ戻った
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作者名:雪白ましろ | 作成日時:2024年3月4日 20時