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甘くて爽やかな香り。
…と共に肩をぎゅむっと掴まれた。振り向くと、俺の肩にも満たないくらいの背の若い女。香りに似つかわず髪は長くボロついた黒い服装。でもその佇まいは何処か品があった。
前髪から覗くガラスのような瞳はまるでこの街のように黒く淀む。
「お嬢さん、どうしました？」
「…………助けて」
顔をふっ、とあげた。それでも顔が見えることはなかった。長い前髪から眼光が鋭く俺を捕らえた。少し寒気がするくらいに。
「助けたいのは山々なんやけど…他の人もおるやろ？君だけってのはアカンから」
「それなら情報を与える。誰も知らないようなこの国の事を」
「…………ふぅん？」
「マンちゃん。どないすん？」
「でも情報は惜しいで」
「信用出来るかが問題やねん」
後ろで仲間が話している。
そう、情報は惜しいが信用が出来るか。命の保護のために適当なことを言っている可能性もある。捨てきれない。
じゃあどうするか。
「取り敢えず数日間だけな？その後の事はこっちの判断やから」
「…………懸命な判断ね」
「お名前を教えてもらっても？」
「…適当に付けてくれて構わない。直に本名は分かるから」
「んー…じゃあ…………」
「あ！俺思い付いたで！」
「シッマ………適当なこと言わんといてや？」
「仮名やろ？そこまで考えんでもえぇやん！率直にハッ！と思ったことやもん！」
「あー、ほんで、その仮名は？」
「ふふん♪聞いて驚くなよ？」
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作者名：詩唄 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shioshio/
作成日時：2017年3月26日 12時
