#19 ページ19
「ペストに似た症状…」
「Aは知っとんのか？」
「まぁ……そのウィルスを作ってるのが父さんだから……他人よりか知ってるとは思うけどね」
Aの"ウィルスを作ってるのが父さんだ"という発言にはこの場にいる全員が息を呑んだ。彼女はどのような心持ちで家を、国を出たのだろうか。
「…………対抗薬の類いはあるの？」
事が落ち着いた辺りで合流したひとらんが質問をする。普段の温厚さは今は見えない。
「1つ、研究室から薬品を持ち出してはある。でもそれが本当に対抗薬なのかは分からないの」
「あ、じゃあ僕にちょうだーい。解析してみるー」
「しんぺい神なら出来るんちゃう」
「頑張るー」
「もしそれが対抗薬なら大量生産を希望するゾ」
「言われなくても！あと、これがウィルスなら対抗薬作れちゃうしね〜」
我が国にはなんとも頼もしい医者……というか医学や薬学の知識を持っている者がいて助かる。対抗薬だった場合の大量生産はエーミールらへんが学生にやらせるだろう。アイツは国立大学の教授だからな……。
「あ、あと」
「ん、A。なんや？」
「ついでに悪魔崇拝主義者を解放して欲しい」
「解放、とは」
「普通に生きて欲しいの。悪魔を崇拝するのは自由。でもそれで人の命を奪ってはいけないから」
Aがそう言うとコネシマは、ふ、と軽く鼻を鳴らした。少し上がった口角からは信頼の2文字が読み取れる。
「当たり前やろ！Aは優しいなぁ！俺やったら悪魔崇拝を禁止するで？」
爽やかな笑顔を浮かべながら喋るコネシマに俺も同意だ。いや、俺なら処刑するだろうな。そう考えればAもコネシマも優しいか。
そんなことを考えていると、シャオロンがスッ、と手を挙げた。皆の視線はコネシマからシャオロンへ移っていく。
そこでシャオロンがした提案に皆賛成した。
反対の意をあげる者はおらず、寧ろやる気で満ち溢れるようだった。少し困惑していたAの全面協力もあり、その計画は一週間以内に実行を決定。我々の士気は上がるばかりだ。
「そもそも、隣国へ対抗薬を掻っ払いに行ったらアカンの？」
この案に反対する奴が、我々の中にいると思うか？
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作者名：詩唄 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shioshio/
作成日時：2017年3月26日 12時
