#15 ページ15
城の近くで耳を突んざく爆発音がした。
その音と共に数人が窓に飛び付く。食事直後のこの空間には先程の温かみなど残っていない。
あるのは命の冷たさだ。
「ヤバい！西門付近に1万人程の兵がおるぞ！」
「旗からして隣国や！」
「なんやと!?物資の補給を断ったからか!!」
「ちゃう！姫を返せと叫んどるわ！」
「なんやねん姫て！」
「A姫やろ。せやんなぁ、クロ」
俺がAの方を見ながら言う。Aはブルブルと震えながらその場にしゃがみこんでいる。その顔は血相が悪く今にも気を失いそうだ。
「グル氏？どういうことやねん」
「恐らくお前らに話しかけた時点で城を脱走したところだったんだろう。そして連れ帰るところを兵に目撃された、とかな」
「せやったら辻褄合うわな。兵が来るまでが早すぎる」
「ちょ、待って？ならなんでクロちゃんは、…Aちゃんはわざわざこっちに？隣国やったら此方側の人も分かるやろ？それに国旗まで付けてんのに」
「此方側だと知って来たんやろ。…………なぁA姫さん？なんでわざわざ此方来たん？なんの意味があんねん」
俺がそう問い詰めると、少し肩をビクつかせてから視線を交わした。黒い瞳は涙に濡れ、何かに縋るかのように。
「…………家から出たかった。あの、汚れた家から…悪魔を崇拝し、国に死を齎す父が憎かった………だったら家から出て、平和なところへ行きたい……………だから、」
そこまで言うと、Aは崩れ落ちた。ショックからなのか、意識が飛んでしまっているらしい。…………それにしてもかなり面倒なことになったな。
「グルちゃん？どないするん。向こうは此方が誘拐したと思ってんねやろ？」
「うむ……」
「ほな俺行こか？」
のんびりとした口調で名乗り出たのはオスマンだ。確かに外交はいつも委せているし、そのお陰でいつも助かっている。しかし…………
「向こうは兵を寄越すぐらいだから、いつでも殺せるだろう。……とか考えてるやろ？」
「…………あぁ」
「せやったら俺警護行くわ」
「あ、ゾム行くんなら俺も行く！」
「一応俺も」
結果オスマンの警護は計4人。ゾム、ロボロ、兄さん、エーミール。
まぁ、エミさんは警護というより陰から戦車で見守る形になるらしいが。それは最早警護とは言わないが…。
「ほんなら行ってきまーす」
飄々とした態度で物事を熟していくアイツなら、きっと大丈夫だ。
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作者名：詩唄 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shioshio/
作成日時：2017年3月26日 12時
